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『沈黙の艦隊』(2023)

原作はかわぐちかいじの同名漫画。
途中からではあるがリアルタイムで読んでいた身としては、映画化は30年遅い!と言いたくなる。

ただその頃だと技術的に映画化が困難だっただろうということもあるが、「なだしお事件」はまだ記憶に新しく、湾岸戦争が勃発したことでPKOによる自衛隊派遣や憲法9条改正論議がリアルな問題として眼前にあったわけで、防衛省や海上自衛隊の協力が得られたかどうかは疑問だし、内容的にもかなりオブラートに包まれた、言ってみれば毒気の抜かれたショボい映画になった可能性は高かったろう。

またむしろ今日の方が、目の前にロシアによるウクライナへの軍事侵攻があり、我が国においても防衛費は増額され政権に権力が集中するなど、どうやら危険な道へ歩み始めている予兆があり、よりリアルな問題として捉えることが出来そうな気がする。

『沈黙の艦隊』(2023)_e0033570_20314442.jpg物語は「やまなみ」の圧壊から「シーバット」の出航、「やまと」の独立国宣言、米国第七艦隊との交戦、「たつなみ」の追尾、と思っていたよりも原作に忠実だった。
登場人物の何人か(政治家や潜水艦の乗組員など)が女性に変えられているのは、時代に即した改変なのは許容範囲だろうし、総じて漫画版のイメージとはかけ離れたキャスティングばかりなのも、これも何らかの意図があるのだろう。

ただ個人的に納得できなかったのは海江田と深町の関係。
深町はかつて海江田が指揮を執る艦に副長として勤務したことがあり、その時に確執があって反発しているという設定なのだが、原作での二人は同期入隊で昇進・昇格も一緒のライバルで、「シーバット」計画立案の際にも共に候補となっていた”同格”の存在だった。
だから物語上でも両雄が並び立ったのだが、この改変が今後の展開に果たして吉と出るか凶と出るか。

今「今後の展開」と書いたが、物語は「やまと」が同盟を結ぶべく日本を目指すところで終わっており、続編を作る気は満々。
特に上戸彩(ビリングは3番目)演じる女性キャスターは、映画冒頭で事故に何らかの疑念を抱くもののその後の出番はなく、ラストに再登場したなと思ったら取材を続けると宣言して出かけてしまう。
わざわざ原作にないキャラクターを創ったのだから、今後活躍させるつもりなのは明白だ。

それにしても大沢たかおはすっかり、何を考えてるかわからない、底知れぬ男のイメージが定着してしまった感がある。
これまた原作漫画のイメージには似ても似つかないが、こんな海江田四郎もありかもしれない。



Commented by ふじき78 at 2023-10-08 20:23 x
海江田は角度によっては見えなくもない。ソックリではないけど。夏川結衣の不機嫌そうな無表情が怖い。
Commented by odin2099 at 2023-10-09 09:31
> ふじき78さん

海江田はラジオドラマ版だと風間杜夫、OVA版だと津嘉山正種なので、もう少しどっしりした部分と茶目っ気が欲しいかな、と思わないでもない。
まあ深町なんかよりはずっと原作寄りだけれども。
by odin2099 | 2023-10-05 20:36 |  映画感想<タ行> | Trackback | Comments(2)

「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”


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