『ウィッシュ』(2023)
2023年 12月 27日
理想に燃えていた筈の王が闇に堕ちて民を恐怖で支配しようとしている時、偶然魔法の力を授かったヒロインは、民を救い王を闇から救い出すことが出来るか、というようなお話で、ディズニーの王道らしい展開ではあるものの、新鮮味という点では欠ける。良くも悪くも100周年の集大成といったところで、本来ならヒーローになり得るだった者が最恐のヴィランなってしまい、しかも反省の色もなくヴィランのまま、というのが目新しい点か。
ヒロインが全てを解決するのではなく、彼女の役目は民衆を鼓舞し、立ち上がらせること。
要は反乱軍のリーダーになるわけで、彼女の仲間たちだけでなく王妃までもが反乱軍に加わり、勇気を振り絞って立ち上がる。
だが仲間の中から裏切者が出たりでなかなかハードな物語でもあり、もっとファンタジーっぽいというか、甘々な物語なのかと思っていたのでその点は意外でもあった。
最後は革命が成功してメデタシメデタシの、ハッピーエンドはハッピーエンドなのだろうが、仲間を裏切った彼は受け入れてもらえるのだろうかとか、王様はずっとこのままなのか、それとも隙を見て脱出して再び独裁者として君臨するのだろうかなど、余計なことをついつい考えてしまった。
また画面構成が舞台を意識しているようで、あまり奥行きが感じられず平板な印象を受けたのだが、これは初めから舞台化を想定しているのかも。
何年か後には日本でも劇団四季の公演で『ウィッシュ』の舞台版が愉しめる、そんな予感さえ感じさせてくれるくらいだ。
ただそれはアニメーション作品としては後退、もしくは敗北宣言のようなものな気もするのだが、全ては主題歌の素晴らしさに免じて許してやろうかという気にもなる。
エンドロールは流石に100周年記念作品らしく、歴代のディズニーキャラが勢揃い。
バンビやダンボ、シンデレラ、アリエル、ポカホンタス、ラプンツェル、エルサ、ラルフ…etcetc。
また同時上映の短編『ワンス・アポン・ア・スタジオ/100年の思い出』にも歴代キャラクターが勢揃いで、こちらはもっと見ていたかった。
吹替は可能な限りオリジナルキャストを集めての新録のはずだが、所々で故人の声も聞こえてきた。