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『サン・セバスチャンへ、ようこそ』(2020)

『サン・セバスチャンへ、ようこそ』(2020)_e0033570_21543597.jpgかつて大学で映画を教えていたモートは、今は売れない作家。
映画業界で働く妻スーに同行しスペインのサン・セバスチャン映画祭へやってきたが、実は妻と新進気鋭の映画監督フィリップが浮気をしているのではないかと気を揉んでいた。
ストレスから体調を崩したモートは友人の紹介で現地の診療所へ行く羽目になるが、そこで魅力的な女医ジョーに出会う。
バツイチで今の夫とも上手くいっていないというジョーの身の上話を聞くうちに、モートは彼女に恋心を抱く。
一方スーとフィリップは、モートの存在が目に入らないかのように二人だけの世界に没入していた。

脚本・監督はウディ・アレン、出演はウォーレス・ショーン、ジーナ・ガーション、ルイ・ガレル、エレナ・アナヤ、セルジ・ロペス、クリストフ・ヴォルツら。
予告編を見て面白そうだなと思ったのだが、うーん、なんだこれ。

結末を言ってしまえばモートはスーから離婚を切り出され、スーはフィリップとの新しい生活を夢見てるし、モートはジョーを口説くことに失敗、ジョーは今の夫との生活を(少なくても現段階では)選ぶ、という終わり方だ。

風采の上がらないモートは同情すべき人物かといえばそうでもなく、頑固で上から目線な部分があり、臆病な男だと自嘲気味に語る一方で強引さも持っている。

フィリップも人妻を寝取るチャラい男とモートの目には映っているものの、周囲の反応を見るに才能はそれなりに評価されているようだし、単純に悪い奴ではない。
要はモートの理想とする映画と、フィリップの作る映画が合わないということなのだろう。

スーはスーで、老いた夫を捨て若く有望な男に乗り換える尻軽で計算高い女のように見えて、実は若い頃はそれなりに夫に尽くしてきたのだろうな、と感じさせる。
何よりもモートが浮気に勘付きながらもスーを非難していないのは悪感情を抱いてはいないということだし、それだけスーが大切な存在だということでもある。
スーはモートの才能を愛して結婚したことが、登場人物たちとの会話の端々に上るが、その才能が開花することはついぞなかった。
となれば若い男との体の関係だけで離婚を切り出したのではないことがわかる。

そしてジョーは、いわばダメンズ好きな体質なのかもしれない。
モートにジョーを紹介した友人は、ジョーの昔の夫も今の夫もクズだったと吐き捨てているが、今の夫が何度も浮気を繰り返しても、夫を愛しているといって別れようとしないというのは、つまりはそういうことなのだろう。
なんとなく収まるべきところに収まった、という終わり方だった。

劇中には幾つかの映画からの引用がある。
『突然炎のごとく』、『男と女』、『野いちご』、『勝手にしやがれ』、『8 1/2』、『仮面/ペルソナ』、『皆殺しの天使』……。
しかし自分に判ったのは『市民ケーン』と『第七の封印』だけだった…。


by odin2099 | 2024-01-21 21:55 |  映画感想<サ行> | Trackback | Comments(0)

「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”


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