シネマ歌舞伎『刀剣乱舞/月刀剣縁桐』(2024)
2024年 04月 29日

ただ<スーパー歌舞伎>を嚆矢として、ここ10年20年、歌舞伎界全体が伝統を活かしつつも新しいものを加える工夫を凝らし、新たなファンの獲得に務めているのは良いことだと思う。
『ファイナルファンタジーX』や『ルパン三世』、『NARUTO』、『風の谷のナウシカ』等々の歌舞伎化には批判の声もあるようだが、古典芸能という伝統に胡坐をかいているだけでは駄目なのだ。
そんな中でも元々時代劇の要素を持った『刀剣乱舞』なだけに、歌舞伎との親和性、融和性は高い。
実写映画版の『刀剣乱舞』の知識しかないので、最初のうちこそ歌舞伎独特のテンポで表現される物語に若干の戸惑いがあったものの、見ていくうちにしっくりくるようになっていった。
ことに”シネマ歌舞伎”の最大の利点である、役者の表情をしっかと見ることが出来るという部分が大きい。
反面、必ずしも舞台全般を俯瞰で眺めることが出来ないのは欠点ともなるのだが、カメラの切り替えの巧みさもあってあまり気にならなかった。
花道を左右から斜めにとらえるショットなどもあり、全体として見やすくなっていたと思う。
そして室町時代を舞台にした刀剣男子たちの活躍にも違和感はない。
途中で他の刀剣男子たちに「お前たちは時々いなくなるのはなんでだ?」と宗近が問いかける場面があるのだが、「色々あって」と言葉を濁す男子たち。
そのうちに「それはお前のせいだ」という台詞も飛び出すのだが、そこでようやく主要キャラでの兼役が多いことに気が付いた。
この場面は上演劇場の客席でも盛り上がっていたが、してみると兼役の配役は尾上松也の発案だったのか。
演出は尾上菊之丞と尾上松也。
主な配役は三日月宗近:尾上松也、小狐丸/足利義輝:尾上右近、同田貫正国/松永大和之助久直:中村鷹之資、髭切/義輝妹 紅梅姫:中村莟玉、膝丸:上村吉太朗、小烏丸:河合雪之丞、異界の翁:澤村國矢、異界の嫗:市川蔦之助、山口左司馬:大谷龍生、弾正奥方 柵:中村歌女之丞、善法寺春清:大谷桂三、松永弾正:中村梅玉。
ベテランから中堅、若手まで、更には人間国宝もいるという布陣である。
【ひとりごと】
活舌が悪いというか、台詞回しが稚拙な若手が一人いて、そこは非常に気になった。