シネマ歌舞伎『歌舞伎NEXT 阿弖流為<アテルイ>』(2016)
2024年 05月 04日

また都では蝦夷を名乗る盗賊一味が暴れていたが、それは蝦夷への敵対感情を植え付けようとする策略だった。
その盗賊一味との争いの中で坂上田村麻呂と阿弖流為は出会い、互いに認め合う。
だが田村麻呂は征夷大将軍として蝦夷討伐の指揮を執ることになり、阿弖流為もまた蝦夷の長として朝廷軍と相対する立場になってしまう。
作は中島かずき、演出はいのうえひでのり。
出演は阿弖流為:市川染五郎(現・十代目松本幸四郎)、坂上田村麻呂利仁:中村勘九郎、立烏帽子・鈴鹿:中村七之助、阿毛斗:坂東新悟、飛連通:大谷廣太郎、翔連通:中村鶴松、佐渡馬黒縄:市村橘太郎、無碍随鏡:澤村宗之助、蛮甲:片岡亀蔵、御霊御前:市村萬次郎、藤原稀継:坂東彌十郎。
映像版の監督は渡部武彦。
<ゲキ×シネ>かと勘違いしていたが<シネマ歌舞伎>の方で、「劇団☆新感線」の公演ではなくそれを基にした歌舞伎版の、更にその映像版。
奇妙な友情に結ばれた両雄が戦わざるを得なくなるという物語に、キーパーソンとなる謎の女性を絡めた構成になっており、幸四郎が主演扱いだが実質的に勘九郎とのダブル主演、いや七之助も含めてトリプル主演と呼びたいくらいこの三人の比重が大きい。
後半になるとアップになった三人の顔に玉のような汗が浮かび、その熱演ぶりにこちらも思わず引き込まれてしまう。
また朝廷側にも蝦夷側にも裏切者がいて、付く陣営をころころ変える輩もいるし、またこの対決を仕組んだ黒幕の意外な正体など物語そのものもしっかりと組み立てられており、3時間の長丁場は途中休憩なしでは些かキツイものの、どんでん返しが続き次々と明かされる謎は最後まで愉しませてくれた。
古典の演目だと台詞の聴き取りにくさや単調な音楽に眠けを誘われるが、現代風の味付けが施された新作だとその懸念も少ない。
久しぶりに劇場へ足を運んでみたくなってきた。