『14歳の栞』(2021)
2024年 05月 12日
懐かしさと同時に違和感も覚える作品である。
先ずこの企画を立て、押し通した製作陣が凄いなと思うし、撮影を許可した学校と生徒の家族が凄いと思う。
中学1年生でも3年生でもなく、2年生の終わりを切り取ったという、その着眼点も面白い。
ここに出てくる生徒は実在しているので、くれぐれもプライバシーには配慮して欲しいとの警句が映画の始まりと終わりに出てくるが、それでも彼ら彼女らは全員実名で出てくるし(カタカナ表記にはなっているが)、授業中や部活動、休み時間や放課後、更には家庭内にまでカメラが入り込み、誰と仲が良いとか、誰と付き合ってるとか、時にはクラスメイトの悪口まで飛び出してくる。
生徒たちは特に身構えるでもなく、かといってどこまで本心を曝け出しているのかはわからず、比較的淡々と自己分析をし、これまでの自分の生き方や将来への夢や不安について口にする。
皆と上手くやってそうな人が、実はコミュニケーションに苦手意識を持っていたり、お調子者のようで意外に冷静だったり、表の顔と裏の顔を使い分けている。
中学生ってこんなに子供だったっけ、と思った瞬間、中学生ってこんなに醒めていたっけとも感じる。
もし自分がこの生徒の立場だったら、撮影は絶対にお断りだが、出来上がった作品を見た時に、担任の教師はどう感じたのだろうか。
生徒たちとの距離感を突き付けられた時、かなりショックを受けたのではないか。
それとも何も思わなかったか、あるいは全て想定内だと受け止めたのか。
教師へのインタビューは敢えて行っていないのだろうが、映像の中の生徒たちと教師たちとの温度差――教師側の熱のなさ、空回り――は気になった。
ソフト化や配信の予定はないということで、毎年のようにリバイバル上映されているようだが、時を置いて何度も見返したくなる気持ちは十分にわかる。
この生徒たちは今頃大学生や社会人になっているだろうが、もし叶うのであれば5年後、10年後に皆がどう変わったか、あるいは変わらなかったかも見てみたいものだが、それと同時にもうそっとしておいてあげて欲しいという矛盾した思いも抱いている。