舞台『サイボーグ009』
2024年 05月 19日
物語はサイボーグに改造された009が目覚めるところから始まり、001の呼びかけに応え研究施設から逃れ、ギルモア博士や他の00ナンバーサイボーグたちと出会い、共にブラックゴースト基地から脱出するものの、そこに刺客としてサイボーグ0010が送り込まれる、という具合に進行する。
00ナンバーたちがブラックゴーストの元に集められた件はさらっと流し、各人の紹介はオープニング部分で済ませ、彼らの過去も深くは掘り下げられてはいない。
あくまで主役は009なのだろう。
一方で原作から膨らまされているのは0010で、彼らにはシキとリクという名前が与えられ、009ことジョーの少年院時代の仲間だったという設定になった。
少年院で虐められていたジョーを庇い、友情を育み、共に脱走を試みたものの途中で離れ離れになってしまった双子の兄弟。
ジョーは何とかこの二人を助けたいと願うのだが、洗脳され記憶を消された0010にはその想いは届かず、ジョーは仲間たちからも非難されるという展開が今回の舞台版の最大の特徴だろう。
0010が膨らまされた反動からか、他の00ナンバーたちの出番というか見せ場は少なく、ギルモア博士も含めた大所帯は持て余し気味で、血気に逸って突っかかる002や、アクション場面での登場が多い004、紅一点の003あたりはまだ認知出来るが、他のキャラクターは誰が誰やら。
2階席の端からでは、同じデザインのコスチュームに身を包んだ00ナンバーたちは見ていても判別がつきにくいし、知らない俳優ばかりなので台詞だけ聴いていると誰と誰の会話なのかがわからない。
006と007には一応の見せ場が用意されてはいるものの、本筋とは関係ない部分なので取って付けた感が拭えない。
そもそも原作でも全員が満遍なく活躍してるとは言い難いのだが、舞台版でも「いるだけ」になってしまっているのが残念。
ミュージカルとは謳ってはいないものの、歌と踊りがメインで、各人のアクションシーンには工夫が凝らされ、特にジョーが加速装置を使う場面では面白い効果が取り入れられているが、総じて音楽、それにSEがうるさくて台詞が聴き取りにくいという弊害もあった。
それでもこれが『009』でなければ、迫力あるステージとして愉しめたのかも知れないのだが。
ここ十年余で『009/RE:CYBORG』、『サイボーグ009 USAエディション』、『サイボーグ009VSデビルマン』、『CYBORG 009/CALL OF JUSTICE』と期待とは違う形での『009』作品との出会いがあったが、その中にこの作品も加えることになりそうだ。『009』の2.5次元化のハードルはまだまだ高い。
脚本:亀田真二郎、演出:植木豪。
出演は009/島村ジョー:七海ひろき、001/イワン・ウイスキー:天華えま(声の出演)、002/ジェット・リンク:高橋駿一、003/フランソワーズ・アルヌール:音波みのり、004/アルベルト・ハインリヒ:里中将道、005/ジェロニモ・ジュニア:桜庭大翔、006/張々湖:酒井敏也、007/グレート・ブリテン:川原一馬、008/ピュンマ:Toyotaka、0010/プラス(シキ):滝澤諒、0010/マイナス(リク):相澤莉多、スカール:中塚皓平、アイザック・ギルモア:大高洋夫。
日本青年館ホールにて。