『クラバート』 オトフリート・プロイスラー
2005年 01月 05日
水車馬での楽しい毎日の暮らしの描写とその裏に隠された暗い影、この二面性が大変魅力的な物語で、自分の意思をしっかり持つこと、それと友情の大切さなどが厭味なくこめられている。
個人的にちょっと引っ掛かったのは、水車小屋の職人と魔法使いというイメージが何となく結びつかないことと、キー・パーソンとなる少女とクラバートの結び付きが弱いと感じられる点だろうか。それにラストの親方との対決も、あっさりとしすぎなのも残念である。
元々は17世紀から18世紀のラウジッツ地方(ドイツとポーランドに跨る地域)に伝わる<クラバート伝説>を下敷きに、『大どろぼうホッツェンプロッツ』などで知られるプロイスラーがまとめたものということだが、そんな伝説があったことさえ初耳、あちらでは相当有名なお話なのだろうか。
なお文庫版の帯には「いい本です。自信をもっておすすめできます。」という宮崎駿監督の推薦の弁が載っているが、公開当時には『千と千尋の神隠し』との類似点が幾つかあげられ、本人もその影響は否定していなかったはず。更に今回の『ハウルの動く城』でも、原作にないハウルが鳥に変身する件など、この『クラバート』の影響だと指摘する声も少なくない。


土と因習の匂い。死が背中あわせに待つ閉塞感。 これは児童書でありながら、人の無意識の中に巣くう 夢魔が形をとってあらわれたような物語。 舞台は近世ドイツの、湿地帯にある水車小屋。 村をまわって物乞いをする貧しい生活にくたびれた 14才の少年、クラバートはある日夢で彼をさそうカラスの 夢を見る。その声にしたがってコーゼル湿地のほとりに ある水車小屋にやってきた彼は、まるで当たり前のように そこで働くことになる。なにしろ寝るところと食べるものがある、 というだけでもクラバート...... more
上下二分冊になってまして、表紙や挿絵は同じ。
まぁお手軽なハンディ・タイプというところですね。
アニメ映画はちょっと雰囲気違いますけど、味があって良いですよ。