『陰陽師/烏天狗ノ巻』 夢枕獏
2024年 09月 06日
「晴明よ、おまえ、おれのことが好きであろう」――以上、出版社のサイトより。
「もしも、おれが先に死んだら、いったいこの世のたれが、ここに座っておまえの酒の相手をするというのだ」――。
シリーズ第18巻となる最新作には、衝撃的な展開でファンを沸かせた「梅道人」を収録。
晴明と博雅の移りゆく気持ちと、変わらない絆とは……。
さらに構想10年・蘆屋道満を主人公に据えた「殺生石」や、動く不動明王にまつわる謎を解く「ちび不動」など、傑作ぞろいの8編を集めました。
今回は「兼家奇々掻痒」、「金木犀の夜」、「ちび不動」、「媚珠」、「梅道人」、「殺生石」、「哪吒太子」、「按察使大納言」を収録。
昨秋出た本だがそのことに気付かず、見つけたのは今年の春先。
ようやく夏ごろになってポツリポツリと読み始めた次第。
相変わらず晴明と博雅の関係性が良い。
最初の頃は、真面目に話をし出した博雅に、晴明が”呪”の話を持ち出して煙に巻き、そのことで博雅が憤慨するというパターンだったが、今では無邪気に大胆なことを言う博雅(もちろん本人に自覚はない)が、時には晴明を慌てさせることもある、というように少しずつ変わって来ていることそのものも良い。
正直言って、怪異の謎解きや物語そのものはある程度パターンが出尽くしているし、「なるほど」と膝を打つより「なんぞそれ」と言いたくなるようなこともあるのだが、晴明と博雅のゆるゆるとした会話、そしてその二人に絡んでくるレギュラー、準レギュラーといった馴染みある人物が共にいる空間が何とも愛おしく感じてしまう。
それを味わいたいが為、これからもこのシリーズを手に取るだろう。