『ザ・ファーム/法律事務所』(1993)
2006年 04月 23日
ジョン・グリシャムのデビュー作は『評決のとき』だがサッパリ売れず、2作目のこの作品からベストセラー作家の仲間入りをすることになった。映画化されたのもこれが最初である。
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野心家の若き弁護士、という主人公のキャラクターは正にトム・クルーズに適役で原作のイメージ通りなのだが、残念ながら映画化にあたって大きくキャラクターが変貌してしまった。(「しねま宝島」からの引用)
クライマックスでミッチは、マフィア、FBI双方から追われる事になり、それに完全と立ち向かって遂には両方とも出し抜く、というコン・ゲームの爽快感があるのが原作の筋なのだが、映画ではその件がバッサリとカットされ、安易で落ち着いた生活を求めるかのごとく小市民的な選択をして終わる、というなんとも拍子抜けする結末になってしまっているのだ。
原作をそのまま映画に置き換えるのが必ずしも良いとは思わないが、これによってミッチは「精悍で強かな奴」から「保守的な安定思考の男」になってしまった。
自分勝手で独り善がりなキャラクターこそトム・クルーズの真骨頂ではないのか?原作者も気に入らなかった(らしい)この改悪にも拘らず、『ジュラシック・パーク』、『ラスト・アクション・ヒーロー』といった並居る強敵を相手に大健闘をみせたのは不幸中の幸いか?
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という訳で、先に原作を読んでいて期待していただけに、不満も大きかった。
長いお話だけに省略や改変は常ではあるのだけれど、一番面白い部分をソックリ入れ替えてしまうのはどうにも納得いかない。
ジーン・ハックマン演じる上司のキャラクターを膨らませたり、ジーン・トリプルホーン扮するミッチの妻アビーを大筋に絡ませたりする前に、もっときちんと押えておくべきポイントがあったんじゃなかろうか、と思う。
こずるく立ち回って自分を正当化するミッチはミッチじゃない。何度見てもその点は不満だ。
原題 : THE FIRM 制作 : 1993年、アメリカ 監督 : シドニー・ポラック 出演 : トム・クルーズ、ジーン・ハックマン、ジーン・トリプルホーンほか ストーリー ハーバー... more