『西洋音楽史を聴く/バロック・クラシック・ロマン派の本質』 前川誠郎
2025年 06月 28日
音楽史における時代区分は独特である。
十七世紀以降のバロック、クラシック(古典派)、ロマン派、後期ロマン派さらに国民楽派、二十世紀音楽へと流れていくそれぞれの特徴はどこにあるのか。
それらの音楽の目指したものは何なのか。
美術史を専門とする一方、生涯をかけて「聴く」ことに精力を傾けた巧者の、西洋音楽に対する熟成の極みに達した愛と深い造詣が綴られる。
「バロックからクラシックへ バッハ/ヘンデル/ハイドン/グルック/モーツァルトとベートーヴェン」、「クラシックからロマン派へ シューベルト/メンデルスゾーン/シューマン/パガニーニ/ショパン」、「クラシックとロマンティック 美術史との対比/文学との繋がり」、「クラシックからバロックへ 晩年のベートーヴェン/ヴァーグナー/ベルリオーズ/リスト」、「諸国の音楽 ブラームス/ドヴォルジャーク/チャイコフスキー/フランク/ビゼー/サン=サーンス」、「クラシックの終焉 マーラー/R・シュトラウス」、「二十世紀の音楽 ドビュッシー/ラヴェル」の七章立てで、以前『美術史家の音楽回廊』として刊行されていたものを、構成を変えて文庫化したもの、ということのよう。著者はバロック→クラシック→ロマン派→後期ロマン派…といった時代区分が分かりづらいと感じていたとのことだが、こちとら門外漢の素人なもので時代区分を気にしたことはなく、単にこの曲が好き、この作曲家良い程度の認識しかなかったのだが、この時代区分は元々は美術史に倣って組み立てられたもの。
著者は美術史の専門家とのことなので、同じ名称を使いながらその内包が違うことに違和感を抱き続けてきたので、自分で音楽史を構成したらどうなるかというのが執筆の同期らしい。
ということは、本書は究極の素人による新・音楽史とでも呼べる位置づけにあるのかなと思うのだが、そもそも前述のように時代区分なんぞ気にしながら聴いていない――この作曲家よりもこの作曲家の方が過去の人、などという概念も持ち合わせてはいない――身からすると、やはり再定義されたものを提示されてもピンとこないのであった。
”教養としてのクラシック”という観点からすると大切な試みであろうし、将来的に音楽史を塗り替えることになるのかも知れないが(そもそも美術史に倣って音楽史を捉えるという考えそのものが理解出来ない)、気軽にクラシック音楽を愉しみたい凡人からすると、些かハードルが高い一冊であった。





