『フロントライン』(2025)
2025年 07月 13日
今回はあのダイヤモンド・プリンセス号が題材とあって、これは是非とも見ねばと劇場で鑑賞。
2020年2月、新型コロナウィルス感染者を乗せた客船が横浜港へ入港してから、乗客・乗員が全員下船するまでの約1カ月に及ぶ船内の様子が、綿密な取材により克明に描き出されているという触れ込みだ。
とにかく知らないことだらけ。確かに連日報道はされてはいたものの、我々は船内のことをまるで知らされていなかった。
乗客たちがどれだけ不安に駆られていたか。
乗員たちがどれだけ乗客たちをフォローしていたのか。
そして未知の感染ウィルスに対処すべく船内に乗り込んだ医療チームの面々。
ことに日本には感染症対応を専門とするグループは存在せず、この件に当たったのも災害対応のスペシャリストではあっても、専門的知識を持たなかった医師や看護師だったというのが驚き。
事なかれ主義で保身に汲々とする医療機関や官僚たち。
面白半分、興味本位の報道中心のマスコミたち。
当時は初動対応の遅れなどが批判のやり玉にあげられていたが、この作品を見ると何もない中でよくぞ持ちこたえられたものだ、という気持ちにさせられる。
また東日本大震災、福島第一原発事故を題材にした映画に比べて動きが早い。
まだ新型コロナウィルスの感染者は出ているし、後遺症に悩まされている人もいる。
そんなタイミングでの映画化、そのスピード感には恐れ入る。
そして小栗旬、松坂桃李、池松壮亮、森七菜、桜井ユキ、美村里江、光石研、滝藤賢一、窪塚洋介といったクラスの俳優陣が、こういったエンタメ大作の”顔”に育っていることも感慨深い。
ちなみに映画はダイヤモンド・プリンセス号の一件に一応の幕引きが行われた時点で終幕となるが、緊急事態宣言が出されるのはそれから一カ月以上経ってからのこと。
我々が大騒ぎするようになるのは、むしろこれ以降からなのだ。
もしかすると今後、この作品を見た関係者から「あれは違う」「これはおかしい」といったコメントが出てくるかもしれないけど、少なくても登場人物のモデルになった人たちは納得してるようなので、色々と脚色されてる部分はあるにせよ、あんな感じだったんだなあと興味深く拝見した。
客船内のエピソードに絞って映画にしたのも上手いと思う。
その後の医療現場の混乱にも興味はあるけど、ドラマにはし辛いだろうし。





