『お見合いしたくなかったので、無理難題な条件をつけたら同級生が来た件について』 原作:桜木桜/漫画:御幸つぐはる
2025年 09月 28日
お見合い話を持ってくる祖父に「金髪碧眼色白美少女なら考える」と、無理難題をつきつけた高校生・高瀬川由弦。
数日後、お見合いの場にいたのは同級生の雪城愛理沙!?
由緒ある家に生まれたため、幾度となくお見合いを勧められうんざりしていた二人は、お互いのために、嘘の『婚約』を交わすことに。
異性との交際経験がない二人は嘘を貫くため、愛理沙が手料理を振舞ったり、娯楽施設でデートをしたり、と初々しくもあまい時間を重ねていく。
急速に二人の距離が縮まる中、家族から「二人の仲睦まじい写真が見たい」と言われ……!?
嘘の婚約から始まるピュアラブコメディ、開幕です。
お互いにお見合い話にウンザリしていた二人は、嘘の婚約者同士になる。最初のうちは距離を置いていたものの、やがて二人は本当の恋に落ちて…というラブコメディ。
財政面で傾いているとの噂のある愛理沙の実家である天城家を、名門・高瀬川家が救済するという謂わば”政略結婚”であるとの誤解から快く思わない者がいたり、他にも高瀬川家の縁戚に連なったり、ライバル関係にある一族の次期当主であったりする由弦の友人たちとの関係が描かれたりと、恋愛面だけじゃなく大袈裟に言えば政財界や宗教関係など日本社会の暗部にも多少触れる部分もあったりで、なかなか奥が深い。
友人たちも同じような境遇にあるから、というだけの仲良しグループではなく、それなりに損得勘定や打算も持ち合わせているのがかえって純粋に感じられる。
最後は無事に二人は結ばれ、友人たちもそれぞれ収まるべきところに収まり、更にエピローグ部分では彼らの次の世代の行く末にも言及されていて、読み終わった時は皆が幸せそうでほっと安堵した。
そんな小説は全8巻で完結したが、納得いかないのはそのコミカライズ版の方。
こちらは全3巻で完結。
しかも物語は小説版の1巻をなぞり、最後に独自のifストーリーと、唐突に二人の結婚式を持ってきて締め括ったのだ。
諸事情あるのだろうが、コミック版を楽しみにしていた読者に対する裏切りのようにも、また原作となる小説に対する冒涜行為のようにも受け取れるのだが、さて。





