『六つの顔』(2025)
2026年 03月 27日
人間国宝である狂言師・野村万作は、2023年に文化勲章を受章。その受章記念公演に密着したドキュメンタリーで、前半は自身の生い立ちや芸への想いを語り、後半はその公演で演じられたライフワークとして取り組んでいる「川上」という狂言の演目をそのまま見せてくれるという構成になっている。
脚本・監督は犬童一心、野村万作以外に、野村萬斎、野村裕基、三藤なつ葉、深田博治、高野和憲らが出演し、挿入されるアニメーションは山村浩二の手になるもの。
そしてナレーションを担当したのはオダギリジョー。
まず年齢を感じさせない矍鑠とした佇まい、それに表現者としてのチャーミングさに驚かされる。
狂言はおそらく学校の鑑賞教室のようなもので、辛うじてその一端に触れた程度の知識しか持ち合わせておらず、野村万作に対してもどちらかというと「野村萬斎の父」という認識だったのだが、この僅かな時間でも、素人目にも少なくても表現力の幅という点では子に優ると感じた。
それに狂言というと面白おかしいものという漠然としたイメージしか持ち合わせていなかったが、今回演じられた演目は時折クスリとさせられる場面はあるものの、奥深いというか、じわじわと浸透してくる。
その願いが通じて再び目が見えるようになるが、代わりに悪縁である妻と離縁せよと告げられる。
そのことを妻に伝え、葛藤の末に男は妻を選ぶのだが、やがて男の目はまた見えなくなってしまう。
そして夫婦は寄り添って退場していくのだが、幸福とは何か考えさせられた。
また個人的には自分が野村萬斎と同世代であり、そして自分の父も野村万作と同世代であるため、特段自分を重ね合わせて見ていた訳ではなかったのだが、より深い部分で落ち着くものを感じた次第である。





