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『ブレイブ・ストーリー』 宮部みゆき

何処にでもいるような少年ワタルの前に、突然両親の離婚話が降りかかってくる。これまでの平穏な暮らしを取り戻したいと願うワタルは、運命を変えることが出来る女神がいるという「幻界(ビジョン)」へ旅立った。
――ということで始まる異世界を舞台にした少年の冒険物語で、作中でも度々言及されているようにRPGをそのまんま小説にしました、といったところ。”ヒロイック・ファンタジー”と大上段に構えるほどのこともない。

仲間と出会い、アイテムを手に入れ、スキルもアップし・・・とパターン化された流れに沿ってワタルは旅を続けて行くのだが、ディティールの描写にこだわるあまり展開が遅く、伏線の張り方もさほど上手くいってるようにも思えないので、気合を入れて一気に読もうとしない限り、なかなか辛そう。お子様向けのファンタジーだ、と安易に飛びつくと脱落しかねないので要注意。

「幻界」は「現世」と合わせ鏡のような存在らしく、双方に共通点を持ったキャラクターがいるらしいのだが、<並行宇宙>というほど確立はされていないようなので、なんだかスッキリしない。両者の関係も不明瞭なまま。
ドラゴンや水人族、猫族など「幻界」にはそれなりに魅力的なキャラクターも沢山いるが、どれも活かし切れていないようなのが残念。面白くは読めるのだけれども、これだけの長さが必要だったんだろうか。結末も思っていたよりあっけなかったし。
今週末からアニメ映画版が公開されるが、どれくらい原作を端折っているかが見もの。

『ブレイブ・ストーリー』 宮部みゆき_e0033570_114467.jpg
Tracked from ルナのシネマ缶 at 2006-07-07 01:01
タイトル : 「ブレイブ・ストーリー/上・下」 宮部みゆき (著)
宮部みゆきと言えばやはり、ミステリーが 1番おもしろいとは思うけど、 彼女のファンタジーも結構好きです。 しかし・・・、この厚みはなぁ〜、 (大きいし重い・・・・笑) ちょっと躊躇していましたが、 アニメとして映画化もされるし、 図書館でたまたま借りられたので読んでみました。 普通に幸せな生活を送っていた小学5年生のワタルに、 突然両親の離婚話がふりかかります。 父は家を出て彼女のもとへ、傷ついた母は、ワタルを道連れに ガスせんをひねって、自殺をはかります。 そんな中、助か...... more
Commented by cinema-can at 2006-07-07 01:06
読まれたんですね〜。たしかに長かったですよねーーー。
前半の現世は、いかにも宮部らしいけど、
ビジョンに行き着くまでが、長いですよね。
映画では、その辺がかなり、はぶかれちゃうんでしょうね。
Commented by odin2099 at 2006-07-07 22:41
「幻界」に「現世」と似たようなキャラクターがいる意味が良くわからないんですけれど・・・(苦笑)。
「幻界」での関り合いが「現世」での関係に影響を及ぼすというわけでもなさそうですし、
二つの世界の相関関係がサッパリ。
作者の頭の中にはキッチリと世界観が確立しているんでしょうけれど、こちらには上手く伝わってこなかったですね。
これは自分の読み方が悪いのかなぁ?

映画は映画で別物として面白ければOKです。
というか、キャスティングがキャスティングなだけに(苦笑)
それだけで自分にとってはマイナスからのスタートなんですけど、
これがうまくプラスに転じてくれると良いなぁ。
Commented by 小夏 at 2006-07-08 00:40
宮部みゆき女史ですが、最近ちょっと路線が変わってきましたよね。
私は、彼女のミステリ系作品はそれなりに読み倒してきましたけど、どーもこの手のは食わず嫌いになっているようです。ファンタジー小説自体は大好きなんですけどねー。

>RPGをそのまんま小説にしました、といったところ
「ゆくゆくは、TVゲームの原作や製作にも携わっていきたい」という氏の発言を聞いたことがありますが、最近の路線変更はその辺も意識してるのかなぁ。
Commented by odin2099 at 2006-07-08 08:09
気になってる作家の一人ではあるんですが、
今まで読んだことがありませんでした。
これを機に、何冊か読んでみようかな。

>RPG
主人公の男の子が「ロマンシングストーン・サーガ」というゲームのファンで、
ところどころで「ゲームの場面にソックリだ」と思う場面があるんです。
これがややこしいんですよね(苦笑)。
ある意味”劇中劇”みたいなもんですし、あれ?どっちの設定?って。
by odin2099 | 2006-07-05 22:07 | | Trackback(1) | Comments(4)

「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』)


by Excalibur(エクスカリバー)
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