『日本沈没』（2006）

のっけから駿河湾で大地震が発生し、アメリカの学者が「近い将来日本は沈没する」と断定。

ここまではスピーディーなんですが、科学者の豊川悦司が「いや、一年も無い！」と反論し、政府首脳をバカ呼ばわりする辺りから迷走が始まります。

気が付けば、危機管理能力に欠け、保身に走る政治屋連中が右往左往する中、貧乏くじを引いて担当大臣になってしまった大地真央が孤軍奮闘…というドラマが延々と描かれます。

……あれ？

えー、本来の主人公は潜水艇パイロット・草なぎ剛とハイパー・レスキュー隊員の柴咲コウのはずなんですが、この二人には未曾有の危険が迫っているという中での緊迫感がありません。

互いに惹かれあうという設定にも、どうにも説得力がありませんし、恋愛ドラマとしては不発と言わざるを得ないでしょう。

日本列島がかなりヤバイ状況になっているというのに、研究所へ行ったり、避難場所を訪れたり、故郷の田舎へ帰ったりとあちらこちらに出没する草なぎクンはかなり不自然です。

旧作は、「帰るべき故郷を失った日本人はどうなる？」という民族のアイデンティティを問いかけるドラマになっていましたが、今回は「愛する人を守るために沈没を食い止める」というのが主眼のようです。

まぁ、小松左京の小説からは題名と登場人物の名前を借りただけと言っても良い映画ですし、二度目の映画化だし、原作者公認（黙認？）の下でのストーリー改変なので、面白ければそれで良いんじゃないかとも思います。

…思いますが、クライマックスが思いっきり『アルマゲドン』なのはどうなんでしょう。

災害を乗り越えて頑張る日本人の姿を描くというのと、「自分は難を逃れてラッキー」と思っている人を描くのでは随分と趣が違うんですが、これが現代流のアレンジというものなんでしょうかね。

もっとも劇中でも阪神・淡路大震災への目配せがありますが、それを経てしまった今の日本では、フィクションとして災害を描くこと自体が難しいのでしょうが。