『スター・ウォーズ/バクラの休戦』 キャシー・タイアーズ
2005年 09月 14日
皇帝が第二デス・スターと運命を共にしたその翌日、辺境惑星バクラに駐留する帝国軍からの救援要請が届く。未知なる異星人の侵攻を受け、苦戦の続くバクラ。ルーク、レイア、ハンらは救いの手を差し伸べることを決断、反乱同盟軍はバクラへと向かうのだった。

人間の生体エネルギーを吸収し戦闘ドロイドへと転換させるという彼らシ=ルウクは、トカゲのような容貌と相俟って嫌悪感をかき立てる。B級スペース・オペラで良くお目にかかる安っぽい異星人像と素直に合致するが、そもそも『スター・ウォーズ』は粗悪なスペース・オペラの拡大再生産なだけに、これは本家取りというか原点回帰と受け取れなくもない(読んでいてなんとなく<ペリー・ローダン>シリーズを連想してしまった)。
そのシ=ルウクに利用され翻弄される少年デヴ・シブワラ。これからの展開を期待させたキャラクターだったが、その悲劇が涙を誘う。
一方で一時的に休戦協定を結ぶに至った同盟と帝国だったが、双方の腹の探り合いがなかなか楽しめる。そんな中、<映画三部作>ではレイアを除いて色恋沙汰と縁のなかったルークは、ゲリエル・キャプテイソンという魅力的なバクラの元老院議員の女性と知り合う。
ルークのロマンスに焦点を当てたのも映画版では味わえないこの物語の特徴だ。バクラは恐るべき侵略者の魔の手から逃れられるのか、同盟と帝国の関係はどうなっていくのか、そしてルークとゲリエルのロマンスは成就するのか――? それは読んでのお楽しみである。
あまり大々的に謳ってはいないが、この作品はレイアの葛藤をも描いている。
自分を拷問し、ハンを苦しめ、養父母を含め故郷の惑星オルデランを破壊したダース・ヴェーダー。そのヴェーダーの娘であることをどうしても受け入れられないレイアの前に、霊体の父・アナキン・スカイウォーカーが謝罪に現れる。嫌悪し反発するレイアだったが、少しづつ大きな成長を遂げてゆくレイアの成長物語。
『スター・ウォーズ』は個人の物語ではない。一人一人個性的なキャラクター達が織り成す群像劇なのである。
今までは素直に、『ジェダイの帰還』ラスト・シーンでセバスチャン・ショウが演じるアナキンをイメージして読んでいたわけだが、ご承知の通り最近その映像はヘイデン・クリステンセン演じるものへと差し替えられた。
となると、レイアの元を訪れて許しを請うのはヘイデン=アナキンというのがビジュアル的に正しいということになるのだが、これは流石にちょっと・・・。