映画は怪人ペンギン出生のシーンから幕を開ける。
奇形児として生まれ、それを疎んだ両親に捨てられる様がタイトルバック一杯使って描かれ、御馴染み「バットマン」のテーマこそ勇壮に流れるものの、主役は誰なのか、監督の視点がどこにあるのかが如実に覗える導入部である。
全体的にもペンギンと、もう一人の悪役キャット・ウーマンに挟まれた格好のバットマンは陰が薄い。

前作はジョーカーにひたすら嫌悪感しか覚えずに観ていて辛かったのだが、今回のペンギンも同じ傾向である。
監督のティム・バートンはフリーク好みのようだが、個人的には憐れみを誘われることもなく全く受け付けないので、やはりこの作品も、出来云々以前に正視し辛いものになってしまった。
ミシェル・ファイファーがダサダサのOLから一転して、セクシーなボンデージ・ファッションまで見せてくれるキャット・ウーマンも結局は同じで、彼女も精神的フリーク。
そしてバットマン自身もやはり同類。
フリークス同士の戦いは観ていて心楽しいものではなく、ダニー・デビートがペンギンを熱演すればするほど心がうそ寒くなってくる。
どうも決定的に監督の趣味とは合わないようだ。
とはいえ、前作に比べればキャラクターが分散した分だけ味が薄まった感じではあるので、より観やすくはなっている。
その世界観の中で、悪役とはいえ真面、というか芯が通っているのが、クリストファー・ウォーケン演じるゴッサム・シティの真の実力者マックス・シュレック。
ペンギンのダニー・デビート、キャット・ウーマンのミシェル・ファイファーを向うに回して、特殊メイクや被り物なしで二人に伍するとは大した役者である。
ところで今回は初めてビデオ/DVDの吹替版を観たのだけれども、なんでマイケル・キートンに渡辺裕之なんかを起用したのだろう。
決して嫌いな役者ではないが(というよりもむしろ好きな方だが)、ダニー・デビートの樋浦勉、ミシェル・ファイファーの田島令子、クリストファー・ウォーケンの小川真司らに比べると気になって仕方ない。
前作ではこれがジャック・ニコルソンにデーモン小暮、キム・ベイシンガーは宮崎ますみという組み合わせなので
未だに見る勇気が持てないほどだ。