『スター・ウォーズ/暗黒の艦隊』 ティモシイ・ザーン
2007年 01月 09日
ルークやハンたちの新たな冒険を楽しみたいというファンの期待とは裏腹に、アクバー提督の失脚に始まる共和国政府の政争劇や、レギュラー・メンバーと同等か、或いはそれ以上の比重を持って描かれる新登場キャラクターの活躍には、熱心な『スター・ウォーズ』ファンを任じる人でも違和感を拭い去れないかと思う。
長きにわたる帝国との戦いが終結したとなれば、今まで表面に現れなかった文官が武官に取って代わって表舞台に登場するのは当然だし、皇帝やダース・ヴェーダー亡き後の帝国側には必然的に新たな魅力的な敵役が必要。また、帝国VS共和国という図式にも映画版で一応の決着が付いている以上、それを単に繰り返すのも芸がない。となれば第三勢力の出現も選択肢の一つとなりうるわけで、つまりは「こういう展開もありだよね」と思うのだけれども、ティモシー・ザーンの重厚な語り口が『スター・ウォーズ』特有の明るさ軽さを損なってしまっているのも事実。
要するに『スター・ウォーズ』らしさが感じられない、ということでファンも戸惑いを覚えたようだが、映像と活字という表現媒体の違いや、これからも『スター・ウォーズ』世界を発展させるという使命を帯びていたことを考えれば、これは致し方ないと思う。何よりも、従来の『スター・ウォーズ』小説といえば、一部を除けば映画版のノベライズしかなかったわけで、読み応えという点ではこの作品に叶うものはない。映画から小説へ、『スター・ウォーズ』世界は華麗なる転身を遂げたのだ。