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『キング・アーサー』 (2004)

『キング・アーサー』 (2004)_e0033570_22284172.jpg最新の学説に基づいて真実のアーサーの姿に迫るという触れこみの、所謂アーサー王と円卓の騎士たちによる<中世騎士物語>とは一線を隔した、ユニークな最新版<アーサー伝説>。主人公はローマ帝国に仕えたサルマティア傭兵アルトリゥスとその部下という設定で、舞台も中世ではなくローマ帝国衰退期。
ということで熱心なアーサーファンにはこの映画で展開される「真実」とやらが馴染まないだろうし、ジェリー・ブラッカイマー・プロデュース作品に特有な大仕掛けもなく、キャストも地味だった点が一般客にアピールしにくいのだろう。大々的な宣伝の割りに評判も客の入りも芳しくなく、公開から3年近くを経た今となっては半ば忘れ去られた存在になってしまっている。

尤も伝説の基になった物語という割に、円卓の騎士のメンバーには著名な名前が並んでいるのには少々疑問が残る。
ガラハッドは本来ランスロットの息子とされているキャラクターだし、ランスロットも後になって伝説に加えられた人物。トリスタンに至っては、無関係な別の伝承から採り入れられたものだからだ。知名度優先なのだろうが、本来の趣旨からすれば本末転倒ではなかったか。
また、『七人の侍』を意識したのかどうか知らないが、円卓の騎士がアーサー含めて7人しかいないのは如何にも寂しい。

にも関わらず、キャラクターの描き分けも今一つなのも残念。
最強と謳われるランスロットは戦いでの見せ場が殆どないし(せっかく2本も剣を持っているのに!)、ガウェインもガラハッドもただいるだけ。
ダゴネットは仲間内では最初に死んでしまうのでインパクトはあるが、キャラとしてはボースと被る。片や寡黙、片や饒舌と色分けされてはいるものの、基本的には一人の人物を二人に分けたような印象だ。

となると実は一番目立っているのは鷹使いのトリスタン(演じているマッツ・ミケルセンはこの作品で初めて知ったが、最近では『007/カジノ・ロワイヤル』で知名度も上昇中。ちなみにアーサー役のクライヴ・オーウェンはこの作品の007候補に挙げられていたので、もしかすると敵味方に別れての再共演が実現していたかも)。
寡黙で、どこと無く日本のサムライ風のキャラクター造型はなかなか渋くて格好良いが、本来のトリスタンはワーグナーのオペラでも知られている『トリスタンとイゾルデ』の主人公。最近では『スパイダーマン』シリーズに出演しているジェームズ・フランコが演じているが、それを考えれば全くイメージは合わないが。

そしてアーサー。
あちらこちらで叩かれているが、やはりクライヴ・オーウェンは地味すぎる
<伝説の救世主>のカリスマ性が微塵も感じられず、何故騎士達が過酷な任務と知りつつ彼について行こうとするのか、その説得力にも乏しい。主体性にも欠け、周りに流されているだけに見えてしまうのもマイナスだろう。
その分、ランスロット役のヨアン・グリフィズに女性ファンなどは流れているようだが、こちらも特筆するほど魅力的だろうか(その後『ファンタスティック・フォー/超能力ユニット』で一般にも名前を知られることに)。もし仮にこの作品をブラッド・ピット、エリック・バナ、オーランド・ブルームらを揃えた『トロイ』並みのオールスター・キャストで作っていたら、少なくても集客効果はもっとあっただろう。それが作品に相応しいかどうかは別にして。

そこで地味目の男性陣に代ってメインのキー・ビジュアルとなったのが、グウィネヴィア役のキーラ・ナイトレイ
宣材を見るとまるで彼女の主演映画のような扱いだが、実際に姿を見せるのは中盤以降のみ。ドレス・アップした女性らしい部分と戦士としての両面を見せてはくれるが、『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』ほどの活躍はないし見た目の美しさもあまり感じられず、彼女目当てに見ようと思っているファンには物足りないだろう。

と初見の時は不満タラタラだったのだが、再見した時は随分と印象が変わって見えた(字幕版と吹替版、都合2回劇場で観ている)。
ローマ帝国から下された非情な命令、故郷へ寄せる仲間の騎士たちの想い、その板挟みとなって苦しむアーサーの姿は正に中間管理職の悲哀。そう思うと地味で渋めのクライヴ・オーウェンは、適役だったのかも知れない。
そしてそのアーサー中心に作品を追っていると、友を気遣うランスロットの押えた表情が際立って見えてくる。いやランスロットだけではない。ボースもダゴネットもトリスタンもガラハットもガウェインも、皆が皆男としての格好良さに満ちた存在に見えてくるのだ(それを考えればグウィネヴィアは余計だったかとも思えるが、彼女を挟んだアーサーとランスロットの微妙な駆け引きがドラマを転がせていることを考えればやはり必要なのだろう。もっともその描き方には疑問が残るが)。

戦いには勝利したものの、ランスロットとトリスタンを失い悲嘆に暮れるアーサー。だがその後に唐突にアーサーとグウィネヴィアとの結婚式が続く。ここで民衆に「キング・アーサーの誕生だ!」と叫ばせる訳だが、これははっきり言って蛇足である。せっかくのしんみりしたシーンの後で、無理矢理ハッピーエンドにすることはないだろう。特にこの後は、じっくりと聴かせる主題歌が流れるエンド・クレジットだ。もっと余韻に浸っていたいと思ったのは自分だけではないだろう。またこのラストは続編の可能性も探ったもののようにも受け取れるが、ランスロット抜きではそれも難しそうだ。

『キング・アーサー』 (2004)_e0033570_2229941.jpg
余談だが、<伝説の救世主>、<宿命の王妃>、<最強の騎士>、<闇の魔法使い>などのキーワードを散りばめた宣伝展開は頂けない。それでは新機軸を打ち出した作品に対して逆行した行為だ。これに惹かれて来た観客に対しても裏切り行為になる。
そしてこのラスト・シーン。これがハリウッド流ということなのかも知れないが、それさえなければ(もう少し違った表現であったならば)何だかんだありながらも全面的にこの作品を支持したのだが・・・。
Tracked from 猫姫じゃ at 2007-04-22 02:43
タイトル : キング・アーサー 今年の8本目 1月23日
キング・アーサー   あたしは、この手の、中世、古代ヨーロッパ映画、文句なく、スキ!   むか〜し見た、エクスカリバー オードリー・ヘプバーン、素敵!!ロビンとマリアン あと、ブレイブハート とか、 忘れちゃぁダメ!ミラ様、ジャンヌ・ダルク et...... more
Tracked from *モナミ* at 2007-04-22 19:19
タイトル : 『キング・アーサー』 伝説のイケメンたち
アーサー王の伝説、ってのも、 イギリスでは常識のように知ってるらしいけれど、 日本じゃぁ、そんなになじみないよね。 その名前と、「エクスカリバー」ぐらいしか、知らない。 ってもともとアーサー王って、ローマ人なの? そこんとこすらよく、知らない。 こういう、昔の神話だとか伝説だとか、 キリスト教だとかをベースにしてる映画を観るたんび、 それらになじみが少ないのが、残念だなぁ、っ... more
Tracked from ピロEK脱オタ宣言!…た.. at 2007-04-22 20:40
タイトル : キング・アーサー…ジャンル的に好きじゃなければ駄作?
世間はワールドカップ{/soccer/}熱{/soccer/}ですが、関係無い私です。 今、一応鑑賞中{/tv/}だったりもしますが{/face_ase2/} {/hikari_pink/}{/hikari_blue/}{/hikari_pink/}{/hikari_blue/}{/hikari_pink/}{/hikari_blue/}{/hikari_pink/}{/hikari_blue/}{/hikari_pink/}{/hikari_blue/}{/hikari_pink/}{/hika...... more
Tracked from 萌映画 at 2007-04-22 22:00
タイトル : キング・アーサー(2004)
おなじみ「アーサー王と円卓の騎士」の物語と思ったら間違い、これはアーサー王の原型・5世紀に実在したというローマ軍司令官アルトリウスの伝説を基にした物語である。 なので、「ロード・オブ・ザ・リング」同様のファンタジーとしてみてしまった人には酷評。またトロイ同様の歴史大河ロマンとしてみてしまった人にも不評。(宣伝がこの路線だったのが間違いか?) 確かに、描き足りないなという部分も多いが、「円卓の騎士はサルマート人傭兵」という新しい学説を具現化した物語と見れば悪くないのでは? マーリンが在の勢力の代表者で、...... more
Tracked from ひらりん的映画ブログ at 2007-04-23 00:29
タイトル : 「キング・アーサー」
やっとDVDがレンタル開始になったので早速見てみました。 劇場公開時は、まだまだ映画館鑑賞にはまってなかったので・・・。 なんてったって、ひらりんお気に入りのキーラ・ナイトレイが出てるから。 見るっきゃないっしょ。 2004年度製作の歴史スペクタクル・ロマン。 あらすじ以下ネタバレ注意です↓(反転モード) 題材は「アーサー王と円卓の騎士」という伝説。 聞いたことあるけれど、内容は知りませーーん。 その当時、ヨーロッパはローマ帝国が支配してたそうな。 アーサーの部族もローマの配下にあって徴兵義務があっ...... more
Tracked from まるっと映画話 at 2007-04-23 13:50
タイトル : キング・アーサー
アーサー王の話には全く馴染みがなかったのですが、なんとかこの映画は楽しめました。 時代は、ローマ帝国がイギリスから撤退するタイミングを見計らって、 サクソン族が攻めてきて、原住のケルト民族を征服しよう、という話だよね。 最終的にそれを救ったのが、アーサー。..... more
Tracked from 虫干し映画MEMO at 2007-04-23 18:00
タイトル : キング・アーサー (2004/米)
KING ARTHUR 監督: アントワーン・フークア  製作: ジェリー・ブラッカイマー 出演: クライヴ・オーウェン キーラ・ナイトレイ ヨアン・グリフィズ ステラン・スカルスガルド  イギリスの伝説のアーサー王を新視点で描く。  ローマ帝国の版図が拡大しきっていた頃、各地から集められ、15年の兵期を勤めたブリテン駐留のローマ騎士アーサーと、その仲間の騎士たちは、現地の勢力に包囲された危険な死地へ、少年とその家族を救出に行くとという最後の指令を受ける。  今まで知ってるアーサー王伝説とは...... more
Tracked from 海外ドラマ☆SFワールド at 2007-04-23 22:34
タイトル : キング・アーサー
{/star/}{/star/}{/star/}{/star/}{/star/} 前から見たいと思っていたレンタルしてきました。星5個。やっぱり良かった~{/face_warai/} ジェリー・ブラッカイマー制作。あの「CSI:科学捜査班」のね。テンポが速くて好きなんだなー。裏切りはありませんでした。チョイ前にT{/buta/}Sの「不思議発見」でSWの見本にもなった「アーサー伝説」って触れてたんで、へえ~と思ってたんだけどそれ円卓の騎士達のことか。あの姿はジェダイを想像させるね。黒澤監督映画「隠し...... more
Tracked from がちゃのダンジョン 映画&本 at 2007-04-29 01:44
タイトル : キング・アーサー 
『キング・アーサー 』(2004)KINGARTHURジャンルアクション/歴史劇/アドベンチャー監督:アントワーン・フークア 製作:ジェリー・ブラッカイマー 出演:クライヴ・オーウェン (アーサー)キーラ・ナイトレイ (グウィネヴィア)ヨアン・グリフィズ (ランスロッ...... more
Tracked from ネタバレ映画館 at 2007-08-25 03:08
タイトル : キング・アーサー
観てきました!... more
Tracked from kei☆の独り言;Blog at 2007-09-10 22:30
タイトル : ■キング・アーサー
原題「KING ARTHUR」 2004年 公式サイト 舞台は西暦415年。ローマの支配下にあるブリテン。帝国からの独立を求める反乱軍ウォード(たぶんケルトの民)と、ローマ軍の司令官であるアーサーは終わりなき戦闘を繰り返していた。アーサーは無敵を誇る円卓の騎士を率いて戦っ..... more
Tracked from ☆彡映画鑑賞日記☆彡 at 2009-11-11 21:25
タイトル : キング・アーサー
 『史上最強の男たちが惚れた男。』  コチラの「キング・アーサー」は、史上最強にして最大の王アーサー(クライヴ・オーウェン)の偉大なる誕生の瞬間を描いたジェリー・ブラッカイマー製作のヒストリカル・アクションです。主演は、クライヴ・オーウェン。共演は、キ....... more
Tracked from 茸茶の想い ∞ ~祇園精.. at 2009-11-14 12:10
タイトル : 映画『キング・アーサー』
原題:King Arthur  -これがグレートブリテンの始まり??- 時代はローマ帝国が終焉に向かう混乱のとき、アーサー(クライヴ・オーウェン)とランスロット(ヨアン・グリフィズ)等、円卓の騎士たちの友情と自由を求める戦いの物語。・・・昨年の公開時に観たのだが期待してみ... more
Tracked from 極私的映画論+α at 2009-11-14 21:32
タイトル : キング・アーサー (2004) KING ARTHUR ..
 ローマ帝国の支配下にあったかつてのイギリス、ブリテン。そこでは帝国からの独立を求めるブリテンのゲリラ=ウォードと、残虐な侵略者であるサクソン人との間で激しい戦闘が繰り返されていた。ブリテンの血をひくアーサーは、この時ローマ軍の司令官として無敵を誇る<円卓の騎士>を率いて“ハドリアヌスの城壁”の死守に当たっていた。しかし、衰退の途にあったローマ帝国はブリテンからの撤退を決定、アーサーにはローマ教皇の名の下、サクソン人に包囲された北部の地からローマ人一家を救出せよ、との過酷な最後の指令が下される。しかし...... more
Tracked from 迷宮映画館 at 2009-11-17 08:51
タイトル : キング・アーサー
伝説のアーサー王、中世騎士の話として伝えられているが、実際はそれより1000年位前の、ローマ帝国支配の時代に、ブリテンに実在した王のことらしい。それにいろいろな肉付けがされて、私たちのよく知る『アーサー王と円卓の騎士』の言い伝えとなった。映画はその史実の部分をクローズアップして、シリアス部分を強調したもの・・・らしい。 5世紀のブリテンは、島に住んでいた【ウォード】族が、【ローマ帝国】の支配に苦しめられていたが、時代の趨勢に勝てず、帝国は島からの撤退を決意した。帝国は、アーサー王率いる騎士団に、最後...... more
Tracked from いやいやえん at 2015-09-18 09:50
タイトル : キング・アーサー
マッツ祭りにより画像追加。 「アーサー王伝説」しかも監督がブラッカイマーだと私これ昔映画館にドキドキして観にいったのですが、実際は大幅違った伝説よりではない現実味のある人間臭いアーサーものでしたよね。ま〜がっかりしたんだ、私。その部分は割り切ってみればそこそこ面白かったです。グウィネヴィアを巡る三角関係も一応はちらっと。 アーサーにクライヴ・オーウェン、グウィネヴィアにキーラ・ナイトレイ、ランスロットにヨアン・グリフィズ。ランスロット=ヨアンはまぁ〜〜〜驚くほど格好良かったですよね。有名騎士た...... more
Commented by 奈緒子 at 2007-04-23 13:52
TBありがとうございます♪
当時の歴史を知らないので、今ひとつ楽しめませんでした。
「アーサー王と円卓の騎士」って名前だけは聞いたことあったんですが、
何をした人なのかも(^_^;)
さらにこの映画を観ても、いまだにわかっていません(*_*)
Commented by モリー at 2007-04-24 15:09
TBありがとうございます。
ジェリー・ブラッカイマー作品というだけで満足してしまいました。
アーサー伝説をよく知らないので楽しめたのかもしれませんね。
次のジェリー・ブラッカイマー作品「パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド」にも期待してますが。
Commented by odin2099 at 2007-04-24 21:37
>奈緒子様

ありがとうございました。
実際のところ、何をした人なんでしょうね(笑)。
伝承も、最初のうちこそ主人公なんですが、
そのうち背景上の人物となって存在感が薄れてくるんですよね。
顔見世程度に出てくるだけとか。
最終決戦では流石に目立った活躍をしますけど、首尾一貫はしていません。
元々、色々な伝承を寄せ集めて作ったからなんでしょうけれども。
Commented by odin2099 at 2007-04-24 21:47
モリーさん、ご無沙汰でした。

そんなに作品観てないですけれど、ブラッカイマー作品は酷評されもしますが、
極端に酷い作品というのもなさそうですね。
意外に、と言っては失礼なのかも知れませんが、打率は高そうです。

まあ必ずしも全部の作品がヒットするわけじゃないのはご愛嬌ですけど(苦笑)。
Commented by sakurai at 2009-11-17 08:55
なぜ今?なはは。
映画って、旬があるなあと思ったのも事実。
ブラッカイマーが全面に出てますが、監督のフークワという人は、結構曲者ですね。
とんでも映画を撮るかと思いきや、ウマいの撮ったり、わからん人です。
この映画は、たぶんにアメリカ戦いを意識して描いてると感じました。
今見ると、また違うんだろうなあ。
Commented by odin2099 at 2009-11-17 22:17
フークワ監督の作品は多分他に観てないから何とも言えないんですけど、脚本とかプロデューサーとか、周囲に影響されやすいというか、他人の意見を極力取り入れようというスタイルの人なのかも知れませんね。

そういやこの作品、ディレクターズ・カット版のDVDも持ってるんだけど、まだ観てないや。
by odin2099 | 2007-04-14 22:33 |  映画感想<カ行> | Trackback(16) | Comments(6)

「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”


by Excalibur