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『大魔神』(1966)

戦国時代、家老・大館左馬之助とその一味の叛乱によって両親を殺され、城を追われた城主の息子・花房忠文とその妹・小笹は、家臣の小源太によって助けられ、魔神が眠るという言い伝えのある領内の山に逃れた。
そして十年後、領民は圧政によって苦しめられていた。
花房の残党と連絡をつけようと山を下りた小源太が左馬之助の手に落ち、それを助けようとした忠文もまた姦計に嵌り、処刑を待つばかり。
小笹は兄と小源太を救うべく、神への祈りを捧げるのだったが…。

僅か一年の間に全部で三本作られた「大魔神」シリーズの栄えある一作目。
本格的な特撮時代劇としてもパイオニア的存在。
兎に角、先ずは時代劇としてしっかりと作られている点を評価したい。
その上で、改めて特撮の素晴らしさを堪能したい。

『大魔神』(1966)_e0033570_1992216.jpg魔神は実物大の手や足、動かない武神像、それに着ぐるみを使い分けているのだが、これが傍で見ている分には分からないくらい融合している。
櫓のセットにいる人の向うに合成された魔神がいて、手を振り下ろすのと同時にそのセットが崩れたり、セット内部の人を実物大の魔神の手が掴んだかと思うと、次のショットでは着ぐるみの魔神が人形を掴んでいるといった具合。
勿論注意して観ていればフィルムの色調の違いなどから合成ショットの有無などは見て取れるだろうが、そんな些細なことが気にならないくらいの迫力だ。
何よりも魔神が大きすぎないのが良い。
一時のゴジラは身長が80メートルやら100メートルやらに設定されていたが、これではただ単に見上げるだけで、恐怖感を覚えさせるドラマ作りは難しい。
その点この魔神は数メートル規模。
櫓に上ると魔神と目が合うくらいの大きさで、これはドラマに自然と溶け込む直接的な恐怖を誘う。

同時上映は『大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン』、つくづく贅沢な二本立てだ。
上映時間からするとメインは『ガメラ』でこちらが添え物扱いなのかも知れないが、ドラマ、特撮共に本作の方が上。
音楽は「ゴジラ」で御馴染み伊福部昭だが、土俗的な内容に伊福部メロディーは実に合う

『ガメラ』は何度か復活したが、『大魔神』もそれに先駆けて復活の企画があり(そもそも平成『ガメラ』三部作は、『大魔神』復活企画が流れて誕生したものだ)、一時は現代のアメリカを舞台にした新作を準備中と伝えられたが(主演はスティーブン・セーガル!)、これは絶対に反対だ。
時代劇で描いてこその『大魔神』であろう。
相応しい場所、相応しい時代の中でこその復活。
中途半端にキャラクターだけを切り売りする行為は謹んでもらいたい

その後は筒井康隆を脚本に迎えて再度の復活企画が持ち上がり、更に昨年には三池崇史の監督で来年公開と発表されたが、どうやらこちらも凍結されてしまった模様。
『ガメラ』と違って自由度は高くないだけに、安易に復活されるよりはマシかもしれない。
Tracked from ROCK N HORROR at 2007-08-22 23:08
タイトル : 大魔神
戦国の世、丹波の国で主、花房忠清を弑して謀反が起こった。新しい領主大館左馬之助は、家臣小源太と忠清の息子忠文と娘小笹を探したが見つからなかった。彼らはお家再興を胸に秘め巫女の悠乃に魔神が封じ込められていると伝わる山にかくまわれていた。それから10年後、大館左馬之助は厳しい年貢の取り立て、砦作りの為、... more
Tracked from 良い映画を褒める会。 at 2007-08-22 23:28
タイトル : 『大魔神』(1966) 日本特撮史上に残る、大映の傑作。..
 安田公義監督、1966年製作作品。『大魔神』という響きは僕らを小学校時代にタイムスリップさせる懐かしい言葉です。はじめて見たのは、たしか幼稚園か小学生の低学年の時でした。昭和50年代の初旬には、このシリーズと『ガメラ』シリーズ、そして『ゴジラ』シリーズが(たまに『ガッパ』も)、春・夏・冬休みの午前中や午後3時過ぎに頻繁に放送されていて、小学生だった私達はその時間になると、野球をやめて帰宅するか、友達の家とかで夢中になって見たものです。... more
Tracked from 猫姫じゃ at 2007-08-23 16:57
タイトル : 大魔神 07145
大魔神 Daimajin 1966年   安田公義 監督  伊福部昭 音楽高田美和 青山良彦 藤巻潤 五味龍太郎 島田竜三 橋本力(大魔神も) ガメラと並ぶ、大映看板キャラ。 ガメラの次の年、1966年に、一気に3作作っただけで封印されたシリーズ、その1作目。 ....... more
Commented by samurai-kyousuke at 2007-08-22 21:56
子供心に大魔神は本当に恐かったです。
おっしゃる通り、巨大過ぎないリアルなサイズも大きな要素だった気がします。韓国映画「グエムル」の怪物も同じ様なサイズでしたね。
Commented by odin2099 at 2007-08-22 22:44
お久しぶりです!
実際に『大魔神』を観たのはかなり後になってからなんですが、あの変身(?)シーンなどはTVで紹介されたのを見たのかな?
かなりインパクトを受けたのを覚えてます。
最近の子ども達は目が肥えちゃってるんでしょうけれども、ちょっと前ならトラウマものでしたね。

『グエムル』、未見なんです。
評判は聞いてますので、怪獣映画ファンの端くれとしては是非観ておかないと!と思っております。
Commented by ぴけっと at 2007-08-22 23:23 x
はじめまして、TBありがとうございます。
大魔神、、、幼少の頃、TVで見て、恐くてたまらなかった記憶があります。時代劇としても、ホントしっかり作ってありますね。今、見ても十分楽しめました。三池監督のリメイクは凍結でしたか。中途半端なリメイクは意味がありませんから、気合を入れてくれないとね。個人的見解ですが、妖怪大戦争やデビルマン実写版の、二の舞は踏んで欲しくありません。
Commented by odin2099 at 2007-08-22 23:38
>ぴけっと様

いらっしゃいませ!
結局『GAMERA』が思ったほどヒットしなかったのが原因のようですね。
企画が完全になくなったかどうかはわかりませんけれど、続報は入ってきませんし、三池監督も『ヤッターマン』などの別企画を幾つか抱えているようですね。
きちんと作ってくれるのであれば歓迎なんですが、昨今のリメイク・復活作品群で納得行く作品というと・・・?という状況ですから、あまり期待出来ません。
Commented by 猫姫少佐現品限り at 2007-08-23 17:03 x
こんにちは!いつもありがとうございます!
あたしはこの映画の音楽、ダメだったなぁ、、、
今で言えば、川井憲次だと、サイコーだと思います。
Commented by odin2099 at 2007-08-23 21:34
音楽、ダメですか?(笑)
川井憲次というと『紅い眼鏡』とか、『パトレイバー』とか、『デビルマン』OVAとか、『セブンソード』とか、『ウルトラマンネクサス』とか軽快なメロディーしか思い浮かばないんですけれど(あ、『精霊のささやき』は良かったんだっけ)、どうなんだろう?
そういや『リング』とか『攻殻機動隊』もこの人だったよなぁ・・・。
by odin2099 | 2007-08-22 19:24 |  映画感想<タ行> | Trackback(3) | Comments(6)

「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”


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