
トールキンの『指輪物語』は、「旅の仲間」、「二つの塔」、「王の帰還」の三部構成。
映画版もそれに準じているが、原作では第二部冒頭で描かれるボロミアの死と一行の離散は映画第一作のクライマックスへ持っていかれ、逆にファラミアと別れたフロド、サム、ゴラムがキリス・ウンゴルへ向かう話と、ヘルム峡谷の戦いを終えたガンダルフ、アラゴルン、セオデン、エオメルらがアイゼンガルドへと赴くエピソード以降は第三部へと持ち越しになるなど原作と離れた独自の流れが目立つ。
エモーショナルな流れを考えれば、一作目のクライマックスにボロミアの話を持ってきたのは理解出来るし、ゴラムがフロドたちをシェロブの棲処へと誘い込むエピソードは、そのボリュームを考えて三作目でまとめたのは正解。
それに映画的な構成を考えれば、二作目のクライマックスに派手なヘルム峡谷の戦いや、エントたちによるアイゼンガルド攻撃を持ってくる方が盛り上がる。
物語の途中で始まり、途中で終ってしまう三部作のブリッジ作品として、作劇上では一番損をしているこの二作目だが、それを逆手にとって大戦争で幕を下ろした構成はお見事。
原作未読でも構わないが、映画冒頭に親切な「これまでのあらすじ」もなく、離散した”旅の仲間”はフロドとサムのコンビ、アラゴルン、レゴラス、ギムリのトリオ、更にメリーとピピンのコンビといった具合に三つのグループに分かれて行動することになるし、新しく登場するキャラクターも沢山いるので、せめて前作は観ておかないと話には付いていけないだろう。
その際には<劇場公開版(コレクターズ・エディション)>よりも<スペシャル・エクステンデッド・エディション>の方が、二作目以降への伏線部分がカットされずに残っていることもあって初心者には特に親切だと思う。

不満といえば、やはりキャラクター描写(特に新しい登場人物)の物足りなさ。
時間的な制約が大きかったのだろうが、セオデンやエオウィン、エオメルにグリマといったローハン側の人物に比べ、ゴンドール側のファラミアは中盤以降のキーとなるキャラクターであるにもかかわらずさらっと流されている感がある。
しかも原作とは性格をかなり変え、屈折した人物として設定しなおしている以上、もっと力点を置いてもらわないとその魅力が出て来ない。
その点、二作目の<スペシャル・エクステンデッド・エディション>ではファラミアの回想シーンとして、亡き兄ボロミアとの対比や父デネソールとの確執も盛り込まれているので些か復権しているが。
そして
原作との違いは前作以上。
殊にヘルム峡谷の戦いは殆ど別物で、原作ではエルフは参戦しないし、エオメルは最初から角笛城にいるので、ガンダルフが連れてくる援軍はローハンの西の谷の領主エルケンブランドのものだ。
映画内のことで考えると更なる新キャラクター(エルケンブランド)を出すよりも、既知のキャラクター(ハルディア)を出すほうが盛り上がるとの判断かもしれないが、その分ローハンという国の規模が幾分か小さくなってしまったようにも思われる。
しかもハルディアはこの戦いで命を落としてしまうわけで、これは原作ファンならずともビックリだ。
それでも『指輪物語」をなぞることなく、映画版『ロード・オブ・ザ・リング』三部作の一本として観るならば充分に合格点を上げて良いのではないか。
これだけの規模の作品、そうそうお目にかかれるものじゃない。