『ダイヤルM』(1998)
2007年 09月 04日
流石に「ダイヤル」を「廻す」のは時代遅れだと考えたのだろうが、この邦題は何とも中途半端。原題”A Perfect Muder”を活かした方が良かったと思うのだが。内容も殆ど別物と言ってもいいくらいなのだから。
夫と妻、そして妻の愛人による三角関係の中で、夫が妻の殺害を企てるというストーリーの骨格そのものは同じなのだが、オリジナル版では愛人は徹底的に妻を守る立場を貫く。
ところがこのリメイク版では、夫が妻の殺害を依頼する相手が当の愛人で、その愛人も犯罪歴のある強かな奴という設定。三者三様の腹の探り合いの妙味も出しているのだが、その割りに捻り具合が足りないというか、底が浅すぎるというか。
ただ、なまじオリジナルの監督がヒッチコック、しかも主演がレイ・ミランドにグレイス・ケリーということで分が悪く、とかく評価が低めのこの作品ではあるが、全くの別物と捉えればそんなに遜色があるとも思えない。
腹に一物ある、胡散臭いパワーエリートの夫はマイケル・ダグラスで、これはピタリ。
妻役のグウィネス・パルトロウは今ひとつピンとこないのだが、代って強烈な輝きを示しているのが愛人役のヴィゴ・モーテンセンである。
『ロード・オブ・ザ・リング』のヒット以来、今や押しも押されぬ大スターとなったヴィゴだが、個人的に注目するようになったのはこの作品からだ。それ以前の出演作では『ゴッド・アーミー/悪の天使』、『クリムゾン・タイド』、『デイライト』などを観ているはずだが、全く記憶にない。
そしてファンならばヴィゴの多才な才能は先刻ご承知のことと思うが、この作品での役柄は芸術家という設定で、実際に劇中で使用されている絵が全てヴィゴ本人の手によるものと知ったときは、その多才ぶりに驚かされたものである(アトリエの提供は、ヴィゴの友人デニス・ホッパーだそうだ)。
ちなみにDVDには特典映像として、未使用のエンディングが収録されている。
結末そのものは同じだが、そこに至るプロセスが異なるために、妻の強かさが良く出ていてこちらの方が面白い。また、原題”A Perfect Murder”(完全犯罪)のニュアンスを醸し出しているのもこちらのヴァージョン。公開版では単なる悲劇のヒロインに終始しているので、今一つ食い足らない印象が残ってしまう。もしこちらが採用されていたならば、作品に対する評価も随分と違っていたかと思うと実に残念である。
なお『ダイヤルMを廻せ!』は1981年にもTVムービーとしてリメイクされているようだ。
こちらの出演はアンジー・ディキンソンとクリストファー・プラマー、アンソニー・クエイル、マイケル・パークスら。
そして監督はボリス・セイガルとのことなので、機会があれば是非こちらも観てみたい。
原題「A Perfect Murder」 1998 公式サイト English 実業家の妻エミリー(グウィネス・パルトロー)は駆け出しの画家デイヴィッド(ヴィゴ・モーテンセン)と不倫関係を続けていた。それを知りつつも静観している彼女の夫スティーブン(マイケル・ダグラス)は、破産目前..... more
【A PERFECT MURDER】1998年/アメリカ 監督:アンドリュー・デイヴィス 出演:マイケル・ダグラス/グウィネス・パルトロー/ヴィゴ・モーテンセン ヒッチコックの「ダイヤルMを廻せ」がリメイクされ現代風にアレンジされたサスペンス。 オリジナル作品を見て...... more
実業家のスティーヴン(ダグラス)は、米国大使館で働く妻エミリー(パルトロウ)とN.Y.で何不自由なく暮らしていました。 しかし、エミリーは無名の画家のデイヴィッド(モーテンセン)と不倫をしていました。 スティーヴンは妻の不倫を知りながら、気付いていな....... more
オリジナルもリメイクもどちらも好きな数少ない作品。 どちらかが気に入ってると、そっちじゃない方のアラが目に付きがちだけど、 これはどっちも大好き!しいて言うと、 リメイクのキャストでオリジナルのストーリーがよかったな。 2作品には上手に邦題がついてると思いま..... more
この作品、実はテレビ放送でしか見た事ないんで感想を述べるのは
気恥ずかしいんですが、エクスカリバーさんの文章を読んで、
共感した所はヴィゴ・モーテンセンの箇所。この映画のみ観た方は
「ヴィゴって、すけこまし野郎なんやぁ」と思ってしまいそうな位、イヤらしさ全開ですんばらしい!ですね。
劇中で使用されている絵については、はぁー知りませんでしたぁ。
なるほど、デニス・ホッパーもからんでましたか。ふむふむ。
年は離れていてもゲージュツ家同士って感じですね。
『名探偵ポワロ』でお馴染みのデヴィッド・スーシェが
刑事役で出てて、嬉しかったのを覚えています。
それにしても未使用のエンディング、ちょっと気になります。
レンタル版のDVDにもこの未使用エンディングは収録されていると思いますので、興味がおありであれば是非どうぞ。
ちなみに本家サイト「CHAOS ∞」内の「しねま宝島」でも本作のレビューを載せてありますが、そちらではネタバレしちゃっております(笑)。
リメイクって、まったく同じにすると、絶対にオリジナルを越せないだろうし、
だからといって、中途半端に話を変えると、改悪ということになってしまうし、
難しい中、この作品は適度に方向転換していてよかった気がします。
出演者がよかったのも、私にとっては魅力の一因です\(^o^)/
良かった!同士がいてくれて(笑)。
どうもこの作品、酷評の方が多いので「そんなに酷くないじゃん!」と声を大にして言いたいですね。
相手がヒッチ先生というだけで、最初から評価がマイナスから始まってる感じ。
それって不公平じゃん(爆)。
・・・だからと言って「これが世紀の大傑作だよ!」と力説する気もないんですけど・・・(苦笑)。
でも全然違うお話なので、特に比較していたつもりもありません。
単純に楽しんだわけですが、後であまり評判が芳しくないことを知り「なんでかなぁ」という思いに囚われております。
やっぱりヒッチ先生は偉大だってことでしょうかね。
でも僕はヒッチ先生の作品をそれほど観てませんけれど、オリジナル版もヒッチ先生作の中ではあまり評価が高くなかったような・・・?