『雨あがる』(2000)
2007年 09月 08日
原作は黒澤作品と相性の良い山本周五郎。
腕は立つが生き方が不器用な浪人者と、その妻の物語。妻は現状に満足しているが、夫はもっと妻の為に良い暮らしをしたいと願う。妻はそんな夫の姿を辛く思うが、夫は妻の気持ちに気付かない・・・。
主演は後期黒澤作品の常連・寺尾聡。人の良い浪人者という主人公の雰囲気は良く出ているのだが、主役を張るには些か貧相である様に思われるし(もっとも脚本執筆中の黒澤は、主役には寺尾聡を想定していたとも聞く)、妻役の宮崎美子も同様で、全体的に地味な作品だという印象は拭えない。
一方で映画出演は28年ぶりという黒澤ゆかりの大スター三船敏郎の長男・三船史郎は、血筋としか言いようのない存在感を見せ、画面を引き締めている。また、仲代達矢や隆大介クラスをちょい役で使えるあたりが巨匠組ならではの贅沢か。
「見終わって晴々とした気持ちになる様な作品にすること」という一文が黒澤の覚え書きにあるが、悪人が存在せず後味もいいので、概ねその目的は達せられたと言えよう。ただ演技にしろ演出にしろ淡々としており、善意が空回りするという展開なので、本来の意味での爽快感やカタルシスとはほど遠い。
もっとも黒澤作品、時代劇大作という期待で見るならば拍子抜けするだろうが、変な先入観無しで見るのであれば納得出来るであろう小品である。してみると「黒澤明監督作品」という冠がとれたことは、作品にとっては幸福だったのかもしれない。
監督は、これがデビュー作となった黒澤組の小泉尭史。
コチラの「雨あがる」は、小泉堯史監督&寺尾聰&吉岡秀隆って「博士の愛した数式」トリオの映画です。 山本周五郎の同名短編小説を基にした故・黒澤明監督の遺稿で、黒澤作品の助監督も務めた事もある小泉監督の監督デビュー作なんだそうです。 江戸時代中期の浪....... more
プロデューサー:原正人、黒澤久雄 アソシエイト・プロデューサー:桜井勉、吉田佳代 監督:小泉堯史 原作:山本周五郎 脚本:黒澤明 撮影:上田正治 音楽:佐藤勝 音楽プロデューサー:斎藤昌利 美術:村木与四郎 編集:阿賀英登 衣装(デザイン):黒澤和子、福田明、長野陽子、大塚満 出演者:寺尾聰 、宮崎美子 、三船史郎 、檀ふみ 、井川比佐志 、吉岡秀隆 、加藤隆之 、原田美枝子、仲代達矢、松村達雄、山口馬木也 、若松俊秀、森塚敏、長沢政義 、下川辰平、奥村公延、大寶智子、鈴木美...... more
1999年 日本 監督 小泉堯史 出演 寺尾聰/宮崎美子/三船史郎/吉岡秀隆/原田美枝子/檀ふみ/井川比佐志/加藤隆之/松村達雄/仲代達矢 原作 山本周五郎 脚本 黒澤明 あらすじ 連日の豪雨で川が氾濫し、近くの安宿に足止めされている浪人 三沢伊兵衛とその妻 おたよ。宿には2人の他にも、雨があがるのを待ちわびている人々がいた。伊兵衛は、そんな人達を喜ばせようと違法の賭け試合で金を稼ぎ、皆に酒や食べ物を振る舞う。その翌日、やっと雨があがる。外出した伊兵衛は、森で若侍達の果たし合いに遭...... more
しっとりとした寺尾聰っぽい映画でした。 のんびりしたタッチだけど、 時代劇初心者の私も、不思議と飽きずに観ることができて、 うまく言葉にできないけど、魅力的な映画(*^_^*) 宮崎美子との夫婦がとってもステキでした。 ★★★☆☆ '99年 寺尾聰目 次... more
私はこの作品が今までに見た邦画の中で最高だと思っています。
寺尾さんの演技も、宮崎さんの演技も役柄にぴったりで、「見終わって晴々とした気持ちになる様な作品にすること」という黒澤監督の覚え書きを実現した、と思ったのですがねぇ・・・
確かに大作ではなく小品ですが、珠玉の小品、と私は言いたいです。
やっぱり、人によって感じ方って違うものですね。
自分は「黒澤明の遺作」ということで過大な期待を抱いていたから、余計肩透かしを食らった印象なんですよね。
作品そのものは好きな部類ではありますが、最高傑作とまでは思えないなぁ。
別に大作至上主義というわけじゃありませんけれど・・・(苦笑)。
雨を含んだ森の緑が、非常に美しく印象的でした。
地味な主役夫婦でしたが、この作品には、あっていたのかなと思います。
森林浴させてもらったような清々しさが心地よかったな。
まぁ地味な題材に地味なキャスト、作品としてはこれで正解なんですけれど、”黒澤作品”として見ちゃうとどうなのかなぁ、というのはありますね。
手間隙かけた丁寧な作品なので良いんですけれど。
悪人も出てこないし、劇的な展開もありませんし。