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『ニューオーリンズ・トライアル』(2003)

銃乱射事件で夫を失った女性が、銃器メーカー相手に責任問題を問う民事訴訟を起こした。原告側、被告側共に陪審コンサルタントを雇い、自分たちに有利に裁判を進めようと暗躍を始める。そんな中、陪審団に潜りこんだ一人の男が怪しい動きを見せ始めた。時を同じくして、双方に評決を金で買わないかと持ちかける謎の女性が現れる・・・。

原作はジョン・グリシャムの『陪審評決』。ただし原作での設定はタバコ訴訟だったが、映画ではこれが銃規制問題に変えられている。
この改変が原作の味を損なうのではという危惧もあったが、見終わって全く違和感はなし。土台がしっかりとした物語は、少々のことでぐらついたりはしないものだ。
またもう一つの柱である陪審制度の問題、こちらは原作の要素をしっかりと掬い取っている。実際に陪審員への脅迫や買収が行われているかどうかはさておき、そう思わせるだけのリアリティは感じられた。日本でも裁判員制度が導入されれば、あながち他人事とは言っていられないだろう。

『ニューオーリンズ・トライアル』(2003)_e0033570_21332230.jpgジョン・キューザック、レイチェル・ワイズ、ジーン・ハックマンそしてダスティン・ホフマンの演技合戦も見応えがあり、グリシャム作品の映画化作品としては上出来の部類。主人公の行動の動機付けを、ある特定の個人への復讐に特化したのは映画での変更点だが、限られた時間内で物語を転がす上では悪くない改変であろう。
ただ毎度思うことだが、こういうディスカッション・ドラマだとやはり字幕スーパーは不利。日本語吹替の方がお勧めだ。

ところでこの作品、原作も映画も原題は”RUNAWAY JURY”。直訳すれば”逃げる陪審員”で、原告側と被告側で票の取り合いをすることを指しているのだろうけれど、陪審制度に馴染みの薄い日本で原作小説が『陪審評決』という邦題になったのはわからないでもない。
しかし映画版の『ニューオーリンズ・トライアル』という邦題は全く意味不明。確かに舞台となっているのはニューオーリンズだし、審判(トライアル)が行われるのもニューオーリンズ。しかしこれでは最早別物だ。
更にビデオ&DVD化に際して『ニューオーリンズ・トライアル/陪審評決』と改題。最初からそうしておけば、原作ファンにもアピール出来たものを・・・。
Tracked from BLACK&WHITE at 2007-09-11 23:20
タイトル : ニューオーリンズ・トライアル/陪審評決
【RUNAWAY JURY】2003年/アメリカ 監督:ゲイリー・フレダー   出演:ジョン・キューザック/ジーン・ハックマン/ダスティン・ホフマン/レイチェル・ワイズ 始まりは銃の乱射事件。犠牲になった会社員の妻が銃製造会社を訴える。 アメリカの陪審員制度は何度も窺..... more
Tracked from 映画鑑賞★日記・・・ at 2007-09-13 14:18
タイトル : ニューオーリンズ・トライアル
【RUNAWAY JURY:2004/01/31】製作国:アメリカ監督:ゲイリー・フレダー原作:ジョン・グリシャム『陪審評決』(新潮文庫刊)出演:ジョン・キューザック、ジーン・ハックマン、ダスティン・ホフマン、レイチェル・ワイズある朝、ニューオーリンズの証券会社で銃乱射事件が....... more
Tracked from みるよむ・・・Mrs.の.. at 2007-09-14 11:04
タイトル : ニューオーリンズ・トライアル
ジョン・グリシャム原作の法廷ドラマを名優達のアンサンブルで ニューオーリンズ・トライアル/陪審評決 プレミアム・エディション  2003年 米 ______________________________ ニューオーリンズで銃の乱射事件が発生。 犯人... more
Tracked from マッシュアップサーチラボ at 2007-11-19 17:41
タイトル : ニューオーリンズ・トライアル の情報を最新ブログで検索し..
ニューオーリンズ・トライアルに関する情報を最新ブログやユーチューブ、通販商品から検索してマッシュアップしてみました。... more
Tracked from La.La.La at 2007-12-30 11:06
タイトル : 『ニューオーリンズ・トライアル』
 制作年:2003年  制作国:アメリカ  上映メディア:劇場公開  上映時間:128分  原題:RUNAWAY JURY  配給:ジェネオン・エンターテイメント  監督:ゲイリー・フレダー  主演:ジョン・キューザック      レイチェル・ワイズ      ジーン・ハックマン      ダスティン・ホフマン 銃乱射事件を起こした犯人が自殺。2年後、犠牲者の遺族が犯行に使 われた銃のメーカーを訴える。原告の弁護士、裏工作に走る被告、謎 の陪審員が絡む法廷闘争が始まる ... more
Tracked from ☆彡映画鑑賞日記☆彡 at 2009-03-17 20:03
タイトル : ニューオーリンズ・トライアル
 コチラの「ニューオーリンズ・トライアル」は、「ペリカン文書」の原作者で元弁護士のジョン・グリシャムのベストセラー小説「陪審評決」をベースに映画化したスリリングなリーガル・サスペンスです。  監督は、「コレクター」、「サウンド・オブ・サイレンス」のゲイ....... more
Tracked from おきらく楽天 映画生活 at 2009-03-17 23:53
タイトル : 『ニューオーリンズ・トライアル』を観たぞ〜!
『ニューオーリンズ・トライアル』を観ました訴訟と銃、アメリカ社会を表現するうえで欠かせない2つの要素を軸に、先の見えない緊迫の法廷ドラマベストセラー作家ジョン・グリシャムの「陪審評決」を、タバコ訴訟から銃訴訟へと置き換えての映画化です>>『ニューオーリン...... more
Tracked from Yuhiの読書日記+α at 2010-01-18 09:13
タイトル : ニューオーリンズ・トライアル
ジョン・グリシャム原作のベストセラー「陪審評決」を映画化したもの。監督はゲイリー・フレダー、キャストはジョン・キューザック、ジーン・ハックマン、ダスティン・ホフマン、レイチェル・ワイズ他。 <あらすじ> 銃の乱射事件で夫を失った女性が、銃器メーカーを相手に訴訟を起こした。経営者たちは、陪審員の表決を勝ち取るため、伝説のコンサルタント、フィッチ(ジーン・ハックマン)を雇う。最新技術を駆使し、あらゆる手を使って陪審員を探るフィッチ。しかし、彼の思惑を大きく裏切ったのは、経歴が謎に包まれた青年、ニック(ジ...... more
Commented by なぎさ at 2007-09-13 08:41
TBありがとうございました。
なぜかこちらからのTBが未送信になってしまうので、当方の名前に記事のリンクを貼って送信させていただきますね!

この作品、少し難しい内容でしたが、こんな職業があることも驚きでしたし、何よりキャストが秀逸でしたね!
またよろしくお願いします。
Commented by odin2099 at 2007-09-13 23:00
なぎささん、わざわざ有難うございました!
えーん、なんでTB受付してくれないんだろ???

それはさておき、この作品、製作が発表されてから実際に映画になるまで、結構時間が掛かったんですよね。
最初はジョン・キューザックとジーン・ハックマンの組み合わせではなく、エドワード・ノートンとショーン・コネリーが予定されていたはず。
コネリーはともかく、原作読んだ時にエドワード・ノートンはイメージだなぁと感じていたので、そちらのヴァージョンも観たかったものです。
Commented by J美 at 2007-09-14 11:07
TBありがとうございました!
おっしゃる通り、日本語版で見た方が内容がスっと頭に入りそうです。字幕を追いながらですと俳優さんの演技まで楽しむのは至難の業ですね。
こちらからもTBさせてください。
Commented by odin2099 at 2007-09-14 22:13
J美さん、有難うございました。
検察官と弁護士が丁々発止とやり合う場面など、セリフにこめられた情報量とテンポが命!
となると、やはり字幕は不利ですね。
劇場でも吹替版で公開すればもっと楽しめたんじゃないかと思いますが、それじゃお客は入らなかったのかも。
Commented by せつら at 2007-12-30 11:10
TBありがとうございました。
エコーさせてもらったんだけど「敬愛なるベートーヴェン」も送ってしまったので
消しておいてください(^^;
この作品は原作も読んでいるんだけどタバコが大嫌いなので出来れば映画も
原作どおりタバコ産業を訴えてほしかったです。
Commented by odin2099 at 2007-12-31 09:13
>せつらさん

先に製作されたマイケル・マン監督の『インサイダー』がタバコ訴訟を扱っているので、こちらは変更になったという話ですが、原作通りで堂々と勝負して欲しかったな、という気持ちはありますね。
ただ原作を知らない人が観ても、その改変がわからないと思われるアレンジの仕方は見事でした。
Commented by miyu at 2009-03-17 20:04
あら、字幕で観てしまいましたけど、
確かにセリフの応酬なので、吹き替えもありかもしれませんね。
でも、せっかくの競演でしたし、字幕も見応えありましたよ~!
Commented by odin2099 at 2009-03-17 23:52
miyuさん、こんばんは。

DVD持ってますが、未だに吹替では観てません。
吹替キャストも悪くないので、いずれじっくりと楽しみたいと思います。
そういえばこの作品以降、グリシャム作品の映画化がなかなか実現してないのが残念なんですが。
by odin2099 | 2007-09-11 21:34 |  映画感想<ナ行> | Trackback(8) | Comments(8)

「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”


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