『第九軍団のワシ』 ローズマリ・サトクリフ
2007年 09月 23日
目的を失った彼は、駐留地の指揮官となりそのまま退役してブリテンに住んでいるアクイラ叔父の元へ身を寄せ悶々とした日々を送るが、ひょんなことから、かつてはブリトン人の戦士であったものの戦いに敗れ奴隷となっていた剣闘士エスカの命を助け、持ち主から彼を買い取ることになる。マーカスの従者となったエスカは献身的に仕え、やがては友情に結ばれ、マーカスは彼を奴隷の身分から解放してやるのだった。更に隣家の娘であるコティアや、エスカが捕えてきたオオカミの子・チビとの交流の中で、徐々に立ち直っていくマーカス。
そんなある日、第六軍団の総司令官クローディウス・ヒエロニミアヌスが、長年の友人であるアクイラ叔父を訪ねてきた。そこで思いがけず彼の口から、ヒスパナ軍団は戦って殲滅され、その象徴である≪ワシ≫がどこかの氏族で神として崇められているという噂があることを聞かされたマーカスは、その噂を確かめることを決意。始めは反対していたアクイラ叔父やクローディウス司令官もその熱意にほだされ、正式な命令を受けたマーカスは、エスカを伴い北の辺境の地へと旅立っていった。だがそれは、危険で困難な旅だった・・・。
サトクリフの<ローマン・ブリテン四部作>と呼ばれているものの一作目で、カレドニアの諸氏族を平定するべく北に進軍した第九軍団が、その後に消息を絶つという、実際に2世紀に起った事件を題材にしたフィクションです。
高校生の頃にサトクリフ作品は、『ともしびをかかげて』と『運命の騎士』共々一度読んでいるのですが、いずれきちんと読みたいと思いつつ今日まで来てしまい、ようやく少年文庫に入ったのを期に購入して読み直しました。
正直言うとお話は殆ど覚えていなかったのですが、その分新作同様に楽しめましたし、リアリティにこだわった描写は児童書でありながらも大人向けだったのかなと感じました。当時つけていた日記を見ると一週間足らずの間に三冊まとめて読んでいるようで(実は間に他の本も読んでいますので、なんと6日間で12冊も読んでました! 暇だったんだなぁ・・・。まぁこの年は年間に186冊も読んでいたわけで、とても受験生のやることじゃないですね)、一番気に入っていたのがこの作品だと記してあります。またヒロインであるコティアには随分想い入れがあったようなんですが、今回読み直してみるとエスカやアクイラ叔父といったマーカスを陰で支え続けたキャラクターの方に目がいきましたね。以前とは違った楽しみ方が出来るのも、優れた作品の証拠なんだと思います。
他の<四部作>作品も順次少年文庫に入るとのことですが、まだ正式な告知がありません。絶版になっているものもあるようですし、<四部作>に限らず全ての作品を早いところ少年文庫に収録し、より多くの人に読んで欲しいものです。勿論自分が読みたい、という気持ちが一番強いのですが。
また現在、『運命を分けたザイル』や『ラストキング・オブ・スコットランド』で知られるケヴィン・マクドナルド監督が、この作品の映画化を企画中とか。『ラストキング~』で共同脚本を担当したジェレミー・ブロックがシナリオを執筆し、『フォー・ウェディング』、『キャメロット・ガーデンの少女』、『ノッティングヒルの恋人』そして『ラブ・アクチュアリー』を手掛けたダンカン・ケンワーシーの製作で、来春にも撮影が開始されるとのこと。こちらにも期待したいですね。
私は、指輪やナルニアより映画化しやすいと思っていました。
ただ、個々人が持っているキャラクターのイメージと役者さんのイメージが合うかどうかは難しいだろうな、と思いますが。
高校生の頃に読まれているのですね。
これを読むのに、一番理想的な年齢ですね。
年を取るとともに、同じ本でも違った受け取り方になりますよね。それがこの本でも実感できたなんて、羨ましいです。
先日、知人に、このシリーズを勧めたところ、すっかりサトクリフにはまってくれました。で、私も読み直したいと思っていたところです。
やっぱり近いうちに読みなおそ、と改めて思いました。(でも、あれこれあって・・・優先順位がねぇ・・・ それに、このシリーズって、読み出すと途中でやめれなくなって、あれやこれやに支障をきたすのですよねぇ・・・)
古い話ですけれど・・・。
この作品以外にも<サトクリフ・オリジナル>とか、以前ご紹介頂いた「トリスタンとイズー」だとか色々と読みたいんですが、なかなか入手し辛いみたいですし、しかもハードカバーなので高い・・・。
早くみんな廉価版にしてくれないかなぁ。
映画化の報は、確か5月頃に伝わってきてます。
楽しみではあるんですが、配役が難しそうですよね。
マーカスは18歳で百人隊長になったという記述がありますし、エスカも同年輩という設定。
若くて色の付いていない、相応しい役者さんが見つかるでしょうか。