どこかの国で、遠くない未来に起こった物語――という設定で、TV版をリセットして語られる『仮面ライダーファイズ』の番外編。
おかげでシリーズを見ていない自分でもスンナリと物語世界へ入ることが出来た。
この世界はスマートブレイン社によって支配され、人々は<オルフェノク>と呼ばれる人類の進化形態とされる新たな種族によって駆逐され、残りは僅かになっていた。
レジスタンスの中心的存在である少女・園田真理は、乾巧こそ人類の救世主であると信じ続けていたが、かつてのスマートブレインとの戦いの中で巧の消息は杳と知れず、他のメンバーたちも彼女の言葉には耳を貸さずに勝手な行動を繰り返すばかり。
一方オルフェノクの側にも人間との共存の道を模索し、レジスタンスへの接触を求めてくる者たちがいるが、両者の溝は想像以上に深い…。

オルフェノクに対抗する手段として、スマートブレイン社にある<帝王のベルト>の奪取を試みるレジスタンスのメンバーたち。
ファイズに変身出来る巧のいない今、唯一オルフェノクに対する存在となったカイザへと変身出来る草加雅人。
オルフェノクでありながら人間の共存を願い、裏切り者扱いされている木場勇治たち。
<帝王のベルト>の一つを持ちサイガへと変身するレオ。
そして記憶を失い別人として生きていた巧の復活、と一筋縄では行かない人間関係が繰り広げられるこの作品は、もはや子供番組の域は越えたといって良い。
前作『仮面ライダー龍騎』でも既にライダーのヒーロー性は剥奪され、たまたま他人を凌駕する力を得てしまった個人のエゴのぶつかり合いを描いていたが、今回はより単純に兵器(装備)として捉えられ、敵味方が奪い合いをするレベルへと落された。
誰が仮面ライダーになるのかは、もはや問題ではないのだ。
だから表面的にはライダー同士の対決を売りにしているクライマックスのバトルにしてから、実際に描かれているのは「人間VSオルフェノク」という対立図式ですらなく、「人間VS人間」「オルフェノクVSオルフェノク」の二重構造。
個人同士の感情のぶつけ合いにすぎない。
その結果、何の解決も見出せずに終わる――救世主の物語と思いきや、結局救いは描かれない――これだけカタルシスのない結末を迎える”ヒーロー映画”を他に知らない。
そもそも、世間は「仮面ライダー」という冠から単純に”ヒーロー映画”と規定するとしても、その範疇で判断すべき作品ではないだろう。
SFという形を借りた一個の”人間ドラマ”として捉え、先入観なしで多くの人に見てもらい、そして評価して欲しい。
ピーター・ホーが演じる初の外国人仮面ライダーの存在や、悪役の声で知られる納谷悟朗、加藤精三、飯塚昭三のベテラン声優陣の顔出し出演なども話題にはなっていたが、個人的に一番気になっているのはゲスト主役扱いの速水もこみち。
というのも番組が始まる前、ネット上では彼が主役だという噂が随分飛び交っていたからで、今でこそスターとなったものの当時は無名だった彼が大きな役に抜擢されたということは、本当に主役候補の一人だったのかも知れない。