
選挙で歴史的な大敗を喫したモーガン大統領が、公職を去る前に下した特赦。その中にはかつては辣腕ロビイストとして鳴らしたものの、スキャンダルによって獄中の人となった元弁護士バックマンの姿もあった。彼はCIAの庇護の元、イタリアで別人になりすまし新しい人生を送ることになったのだが、実はこの特赦はCIA長官メイナードの策略だったのだ。バックマンの持つ、所有国家不明の最新軍事衛星システムの謎を巡り、各国の諜報機関はその行方を追い求める。そしてそのことに気付いたバックマンもまた、決死の逃亡生活を繰り広げるのだった・・・!

アカデミー出版から「超訳」として刊行されたり、また旧作のお色直し版だけでなく新作も小学館から出版されたりと、このところ紆余曲折が激しかったグリシャムの最新作が久々に新潮社から発売されている。今回はリーガル・サスペンスという枠からは随分とはみ出し、ハイテクを駆使した最新のスパイ兵器(偵察衛星)の争奪戦が中心。だがそこはグリシャムのこと、スパイ・アクション物やポリティカル・フィクションとは一線を隔しており、あくまで法曹界出身者らしい内容に留まっている。そして御馴染み”ジェット・コースター・ノベル”と称される怒涛の展開も健在。
ただこの作品に関しては若干尻切れトンボの嫌いもあり、キャラクターを使い切っていないなと感じる部分もあるのだが、
もしかすると続編を想定しているのかも知れない。そう思わせるだけの含みを持たせて作品は幕を閉じている。