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『リーグ・オブ・レジェンド/時空を超えた戦い』 K・J・アンダーソン

著者は『スター・ウォーズ』スピンオフ小説などを手掛けたケヴィン・J・アンダーソン。というわけで単なるノベライズにはとどまらず、原作コミックや原典小説からの引用も多く小説としての面白さも追求した作品に仕上っております。他人の褌で勝負するのは得意ということなんでしょうか。映画を補完するだけではなく、別の楽しみも与えてくれるという点では、正にノベライズの鏡のような作品で、是非映画とセットで楽しむことをお奨めします。

・・・と、これで終るのもナンなので、以下は原作コミックや映画版との相違点をメモしておこうと思います。
ネタバレ全開ですので、これから読む・見るという人はその後でお目にかかりましょう。

『リーグ・オブ・レジェンド/時空を超えた戦い』 K・J・アンダーソン_e0033570_11241656.jpgさて今回の超人同盟のメンバーは7人。これは『七人の侍』や『荒野の七人』を意識した数字でしょうね。
アラン・クォーターメイン、ネモ船長、ミナ・ハーカー、ジキル博士とハイド氏、透明人間は原作通りですが、ドリアン・グレイとトム・ソーヤーは映画オリジナルの追加メンバー。特に唯一のアメリカ人であるトム・ソーヤーは、アメリカ人観客向けに追加されたようで、成長してアメリカの諜報機関員になっているという設定になっています。またこのノベライズ版によると、ファントムの犠牲になった諜報員仲間だった親友の仇討ちが目的で、その親友というのが当然というべきかハック・フィンだということが終盤で明かされます。再三、故郷のミシシッピー川に触れるのもノベライズならではの描写でしょう。

もう一人の追加メンバーであるドリアン・グレイはミナ・ハーカーと元恋人同士という関係ですが、こちらの詳細は語られずじまいに終ってます(夫である『吸血鬼ドラキュラ』の主人公ジョナサン・ハーカーとは死別ということのようですが、原作では離婚)。ちなみに原作コミックでは、ミナがチームリーダーであり、ドリアン・グレイは肖像画としてチラっと登場して(?)います。

キャラクターが違っているのは透明人間の正体で、原作コミックに出てくるのは原典の主人公ホーリー・グリフィンその人なのですが、映画及びノベライズではロドニー・スキナーという別人で、透明薬を盗んだコソ泥。しかしノベライズでは実は英国諜報部員だったというオチがつきます。映画にもこういったどんでん返しがあればもっと面白かったでしょうに。
キャラクターが違うといえばクォーターメインもそうで、原作コミックでは阿片中毒の憐れな老人・・・まぁこの設定ではショーン・コネリーは出演を承諾しなかったかも知れませんがね。
ハイド氏にはエドガー・アラン・ポーの『モルグ街の殺人』の獣人のイメージが意図的に重ね合わされていますが、原作コミックにはその主人公オーギュスト・デュパンも登場、ノベライズにも名前がチラっと出てきます。

メンバー以外の重要人物としては何といっても。このコードネームは勿論「007」シリーズの上司から来ているわけですが、その正体がジェームズ・モリアーティ教授なのは原作コミックと同じです。言わずと知れたコナン・ドイルの産み出した名探偵シャーロック・ホームズの宿敵で、”犯罪界のナポレオン”と呼ばれている人物ですが、原作コミックにもノベライズにも原典から、ホームズとモリアーティの有名なライヒェンバッハの滝での対決場面の引用があります。
原典では両者ともに滝壺に落ちて死んだものと思われ、実際コナン・ドイルは一度はここでシリーズ打ち止めを画策したものの、結局は読者からの要望が強く目出度くホームズは復活するのですが、この作品内では逆にモリアーティは一命を取り留めたものの、ホームズは生死不明のままです。
また原作コミックではMの頭文字から、ミナはその正体をホームズの兄マイクロフト・ホームズだと考えていたのですが、ラストでモリアーティに代ってマイクロフト・ホームズが新たなMとなり第二部では彼が指令を下すようになります。
そしてその仮の姿ファントムですが、ノベライズではちゃんとガストン・ルルーの『オペラ座の怪人』にも言及しているあたり、アンダーソンの芸の細かさを感じます。

ノベライズにはもう一人、キャンピオン・ボンドという英国諜報部員がラストに出てきますが、これは原作コミックにも登場している人物。名前からある有名キャラクターとの血縁関係が類推されますが(一応、祖父という設定のようです)、権利関係問題もあって言及はされておらず、映画では出番が丸ごと割愛されたようです。ピアース・ブロスナンやティモシー・ダルトンあたりがカメオ出演でもしてくれていれば、もっと面白くなっていたでしょうね(予算を考えればジョージ・レイゼンビーとか)。

物語の展開は映画とノベライズに大差はありませんが(もっとも原作とは殆ど違う話になっております)、映画では一切オミットされた、世界大戦回避を目的とした秘密会議のためにベニスに集められた各国代表の右往左往ぶりがなかなか楽しめます。これがないため映画はヤケにスケールが小さく感じられてしまうのですが、二時間足らずでまとめるためには致し方なかったのでしょう。

そして決定的に違うのはラスト・シーン。
映画版では亡くなったクォーターメインをアフリカに埋葬。皆が去ったあと呪術師が現れ、もしかするとクォーターメインは生き返るのか?と思わせるカットで終わります。これは物語前半部分に出てくるクォーターメインのセリフ「『アフリカが私(=クォーターメイン)の生命を奪うことは決してない』と呪術師が祝福してくれた」を受けたものですが、ノベライズ版では火星に異常な現象が起こったので、また皆の力を借りたいというボンドの説得に耳を貸さず、クォーターメインを埋葬すべくアフリカへノーチラス号で旅立つところで終わっています。
原作コミックの第2部ではこのH・G・ウェルズの『宇宙戦争』を元に、同盟の連中は火星人を相手に奮闘するのですが(しかも同じウェルズの『ドクター・モローの島』のモロー博士まで重要な役どころで出てきます)、ハッピー・エンド風の映画版とこのノベライズ版、どっちがワクワクするかというと・・・ねぇ?
by odin2099 | 2007-11-18 11:33 | | Trackback | Comments(0)

「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”


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