柳生一族を扱った連作短編集で、
「慶安御前試合」、
「柳枝の剣」、
「ぼうふらの剣」、
「柳生の鬼」、
「跛行の剣」、
「逆風の太刀」の6編から構成されている。

主人公となっているのは、それぞれ柳生連也斎、柳生友矩、柳生宗冬、柳生十兵衛、柳生新次郎、柳生五郎右衛門だが、元々は別々の雑誌に掲載された作品を一冊にまとめているので、各編は独立している。それでも同じ一族の物語であり、時代が共通しているものもあるので、ある作品で主役を務めた人物が他の作品にも脇役で登場することは往々にしてあり、その際に人物造型にブレはない。当初から意図してのものかどうかはわからないが、そのあたりはお見事。
『影武者徳川家康』、
『捨て童子松平忠輝』、
『一夢庵風流記』など長編作品は幾つか読んでいるが、こういった短編作品もまた楽しい。