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『時の娘』 ジョセフィン・テイ

古今東西のミステリー作品、推理小説が紹介されると、必ずと言っても良いほど名前の挙がってる作品だ。しかも主人公は”安楽椅子探偵”、”ベッド・ディテクティヴ”物の典型で一歩も部屋を出ず、扱うネタは現実の殺人事件などではなく歴史上のミステリーなのだから、結構異質なものに分類されそうなのだけれども評価は高い。文庫本の紹介文には「探偵小説史上に燦然と輝く歴史ミステリの名作」とまで断言してしまっている。
ということで以前から気にはなっていた作品に、思い切ってチャレンジ。ふむふむ、なるほど、そういうことだったのか・・・。

『時の娘』 ジョセフィン・テイ_e0033570_23103156.jpgお話はロンドン警視庁のアラン・グラント警部が、犯人を追跡中に負傷。入院生活を余儀なくされ、その退屈しのぎで歴史上のミステリに挑むというもの。取り上げられているテーマは、薔薇戦争の時に幼い二人の甥を殺害して王位に付いたとされるリチャード三世は、果たして本当に極悪非道で残虐な人物だったのか?ということ。

どうもこの薔薇戦争というやつ、出てくる人物が親類縁者ばかりウジャウジャといるのでゴッチャゴチャになり、誰が何をやってどうなったのかがイマイチ整理しきれないのだけれども、当たり前だと思われていることも丹念に調べていくと意外な盲点があり、場合によっては180度ものの見方が変わることもあり得るのだ、という点では充分に楽しめた。実際この作品が発表されて以降、リチャード三世像も再評価されるようになったというから、歴史書でもなんでもない、たかが小説とはバカに出来ない。もっともこれは作者独自の説ではなく、元ネタはあるらしいのだが。

ただやっぱりイギリス王家の話はピンとこない。この作品の存在を知ったのは、影響を受けて書かれた高木彬光の<神津恭介シリーズ>の一話『成吉思汗の秘密』を読んだからだったのだけど、そちらの方が面白かったな。
Commented by koujitu3 at 2007-11-21 10:28
私は、ミステリーをあまり読まないのですが、これは読んでます。
大好きです! 
といってもかなりの部分を忘れてしまっていますが。(笑)
読んでいる間は夢中だったし、読み終えて大満足だった事を覚えています。時間があったら読み直したいなあ。
Commented by odin2099 at 2007-11-21 21:16
「英仏百年戦争」「薔薇戦争」のあらましはザーっと押さえていたつもりだったんですが、ヘンリーだ、エドワードだ、リチャードだ、と言われると誰が誰やらわかんなくなっちゃうんですよね(苦笑)。
誰と誰が親子で、誰と誰が兄弟で、だからこの人とあの人は叔父と甥だとか、こういうの苦手なんですよねー。日本史だとそんなに混乱しないんだけど。
だからきちんと歴史を頭に入れてからなら、もっと楽しめたんだと思います。
その点『成吉思汗の秘密』は、源義経がジンギスカンだった?!というテーマなので、スンナリと入って行けました。
by odin2099 | 2007-11-20 23:13 | | Trackback | Comments(2)

「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”


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