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『わが青春のアルカディア』(1982)

『わが青春のアルカディア』(1982)_e0033570_23381482.jpg『銀河鉄道999』『さよなら銀河鉄道999/アンドロメダ終着駅』『1000年女王』に続く、松本零士の<宇宙の海の物語>を構成する4部作の完結編。

といっても時系列的には『1000年女王』と正続2本の『999』の間に位置し、<戦場まんがシリーズ>から『スタンレーの魔女』や同じ題名である『わが青春のアルカディア』のエピソードを、明確に「遠き祖先の物語」として取り込んで構成された若きキャプテンハーロックの物語。

何故片目になったのか、ドクロの旗やコスチュームにはどんな謂れがあるのか、海賊になった理由は何か、親友トチローやエメラルダスとの出会いはどうだったのか等々の興味を盛り込みながらハーロック物の集大成を意図して企画されている。
『1000年女王』や『999』のように、先行する原作作品を持たない劇場用オリジナル新作というのも注目ポイント。
ただ、仮に時系列順に4作品を並べて観たとしても、2本の『999』以外は特に繋がりは無い(特に『1000年女王』)。

さて、この作品に関しては観るたびに印象が違う。
最初は公開初日にガラガラの映画館で観て、過剰な期待と裏腹の内容に若干ガッカリしたもののそれでもまぁ満足したのだが、その後はビデオ等で見直す毎に「なんてつまらないんだろう」「いや、意外に面白いじゃん」を繰り返しているような感じ。
今回は本当に久々に観て所々で涙腺が緩んだのにはビックリ。
涙もろくなったのか、寛容な気持ちになったのか、それともそれとも単に懐かしかっただけなのか。
そのあたりは自分でもわかりませぬ。

不満を覚えたのは、専ら他の作品との整合性の無さと、期待を煽るだけ煽っておいて裏切った原作者のコメントに原因がある。
例えばトカーガのゾルというのは時系列的にはもっと後年にあたる『宇宙海賊キャプテンハーロック』という作品から持ってきたキャラクターだし、<戦場まんが>版『わが青春のアルカディア』でファントム・F・ハーロックII世と友情で結ばれるのは台場元という人物であって、トチローのご先祖である大山敏郎ではない。
まぁこのあたりはまだ許せるものの(脇役だし)、これが主役であるハーロックとトチロー、エメラルダスの出会いの仕方、順番が原作版『クイーン・エメラルダス』などとは全く別物となるとこれはちと問題。
各人の出自にも関わってくるし、これでは熱心な松本ファンほど混乱してしまう
日頃「他の作品とは密接に関係し合っている」と発言してる人の作品だけに痛いですな。

そして期待を持たせたコメントとは、この作品に「メーテルが登場する!」というもの。

比較的早い段階でこのコメントが出た時には「単なるお遊びだろう」程度に考えていたのに、わざわざ公開直前になってまで「必ず登場させます」と明言してるのだから始末が悪い。
予定では、ラストにハーロックたちがアルカディア号に乗って旅立つ際に「一緒に行きたい者がいれば乗せていく」と地球人たちに呼びかけ、それに応えて何人かが乗り組みを志願するというシーンがあるのだが、その中にメーテルもいるということだったようだ。
他にも『999』に出てくる星野鉄郎の父親(=黒騎士ファウスト)が出てくるという話もあったが、こちらもいつの間にか立ち消えになったっけ。

それ以外にも、例えばハーロック/井上真樹夫、トチロー/富山敬、エメラルダス/田島令子ら御馴染みキャストに加えて、マーヤの武藤礼子、ゼーダの石田太郎ら新キャラクターのキャストも好演しているのに、冒頭部分でファントム・F・ハーロックの声として”特別出演”した某大物俳優があまりにも下手過ぎたとか(因みにその出演料は「一声一千万」と言われていた。もっとお金は有効に使おうよ)、木森敏之の音楽は非常に素晴らしく、またドヴォルザークの「新世界」やグリークの「ソルヴェーグの歌」、アルビノーニの「アダージョ」などクラシック音楽の流用も斬新だなと思わせながらもどちらも決定的に画面に合ってないとか、色々あるのだけれども…。

『わが青春のアルカディア』(1982)_e0033570_2032917.jpg更に言うならば、予告編の出来が良すぎた
全編に渡ってドヴォルザークの「新世界」が流れ(第一、第二、第四楽章が使われている)、これがまた画面にピタリと合っているのだ。
それ以上の仕上がりを本編に期待してしまったのが失敗だったのだな。

ところでこの作品、当初の予定より1年遅く完成したのだが、公開に当たっては逆に数日繰り上げた。
その結果は前述の通り、かなり空席が目立つ寂しいもの。
最終的にも興行成績は振るわず、続編として放送されたTVシリーズ『わが青春のアルカディア 無限軌道SSX』も低迷。
そのせいだろう、翌年公開が予定されていた『クイーン・エメラルダス』の劇場版は製作中止となり、5年余り続いた松本零士ブームも終焉を迎えたのであった…。

Commented by Brian at 2008-01-20 11:09 x
エッ? (;゜⊿゜)ノ マジ?
もう、これって上映から25年も経ってるんですね・・・時間の流れが早く感じます。
ハーロック、かっこいいのになぁ~。
これで松本アニメの人気が落ちた要因になったのか、残念ですね。
Commented by odin2099 at 2008-01-20 14:31
そうなんですよねー。改めて25年も前の作品だと考えると・・・自分も歳食ったもんだ(苦笑)。
『ヤマト』、『999』・・・と毎年毎年公開されると、流石にファンでも飽きるんでしょうね。
またこの前に公開された『ガンダム』の劇場版が、『ヤマト』や『999』ほどヒットしてないことから、SFアニメブーム自体が勢いを失っていたということでしょう。

さて、『ヤマト』から延々と観直していますが(去年はサボってたけど)、やっと『アルカディア』までほぼ順番通り追いかけてきました。
先はまだ長いからそろそろペースを上げないと。
一応予定では『198X年』、『ゴッドマーズ』、『幻魔大戦』、『クラッシャージョウ』、『ファイナルヤマト』、『ザブングル』&『ダグラム』、『ナウシカ』、『少年ケニア』、『オーディーン』、『北斗の拳』、『アリオン』、『ラピュタ』・・・と続けるつもりですけど、どうなりますことやら(苦笑)。
by odin2099 | 2008-01-19 20:05 |  映画感想<ワ行> | Trackback | Comments(2)

「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”


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