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『FUTURE WAR 198X年』(1982)

製作当時に入手可能だった最新の科学的、軍事的データを基に描き出したという触れ込みの、第三次世界大戦のシュミレーション映画です。
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アメリカは対戦略核ミサイル用戦闘衛星の実験を行い、見事に成功させるのですが、脅威を感じたソ連の手によって開発した科学者は誘拐されてしまいます。
機密を守りたいアメリカ政府は科学者を乗せた原潜を核魚雷で撃沈、ここで東西の緊張が一気に高まっていきます。
続いて西ドイツの空軍基地に、ソ連の最新鋭戦闘機が亡命のため不時着。
ソ連は機密が漏れるのを阻止するべく基地を急襲しますが、その戦火の中で恋人を失ったNATO軍兵士は放心状態に陥り、報復のためにミサイルを発射。
遂に全面核戦争の火蓋が切って落とされてしまうのです。

ソ連の書記長は緊迫状態の中で病に倒れ、超タカ派の国防相が主導権を握り、情報が途絶した中で焦りに駆られたKGB士官の手によって潜水艦の核ミサイル発射ボタンが押されという具合に、悪夢の連鎖反応によってあれよあれよという間に戦争が起ってしまうというのはドラマとしてはなかなか盛り上がるのですが、成り行きで戦争が始まってしまったということではなく、あくまでも戦争を起すためのストーリーなのは、ちょっと作為的な感じが強すぎますね。

ラストでは両国首脳陣は良心に目覚め、街には反戦を訴える人々のデモ行進が起り、メデタシメデタシ。
あ、クライマックスには主人公の日本人(戦闘衛星の開発者の一人です)が我が身を犠牲にして衛星に乗り込み、誤射された核ミサイルを宇宙空間で打ち落とそうと奮戦するという見せ場が設けられています。
レーガン大統領が”スター・ウォーズ計画”を発表するよりも前の作品ですが、実際にそういうことは可能なんでしょうか。
確か宇宙飛行士の方が「宇宙での索敵は非常に難しい(不可能だ)」みたいなコメントをしていたように記憶しているのですがね。

ラストシーンを見るまでもなく、この作品は「反戦」「反核」を訴えた映画です。
それも強いメッセージを送っています。
ところが製作時には「内容が好戦的だ」として東映動画(現・東映アニメーション)のスタッフがボイコット運動を起し、それが大きく報道されたりして話題になりました。
自分には殊更「好戦的な内容」だとは思えませんでしたし、今回観直してもその印象は変りません。
フィクションにそこまで目くじら立てんでも、などと考えてしまうのですが、それは不謹慎なんでしょうか。

ところでこの作品、イメージ・イラストを生頼範義が手掛け、キャラクター・デザインもアメコミ調といいますか、ちょっとバタ臭いリアルな感じを出していますし、登場するメカも軍用兵器が中心、とリアルさが売り物ですが、本来ならばアニメーションではなく実写映画でやりたかったのだろうな、という製作サイドの思いが感じられます。
そんな理由もあったのでしょうか、声の出演者も一風変っていまして、主人公には北大路欣也夏目雅子を起用し、その周囲を金内吉男、柴田秀勝、野田圭一、小林修、大木民夫、中村正、北川米彦、中田浩二、雨森雅司、宮川洋一、青野武、宮内幸平、大塚周夫、納谷悟朗、石原良、徳丸完といったベテランで固め、アニメというよりも洋画の吹き替えのような豪華な顔触れが揃っています。
もっとも声優初挑戦の二人には違和感の方が強いですし、やはり餅は餅屋、本職の方に全てお任せした方が作品の完成度は高まるのですがねぇ。

監督は舛田利雄と勝間田具治の二人でプロデューサーには吉田達、それ以外にもどういう訳か『宇宙戦艦ヤマト』縁のスタッフの名前が並んでいます。
by odin2099 | 2008-02-03 00:30 |  映画感想<ハ行> | Trackback | Comments(0)

「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”


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