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『恐怖の谷』<新訳シャーロック・ホームズ全集> アーサー・コナン・ドイル

モリアーティ教授の一味にいる匿名の人物から、ホームズの元へ届いた暗号で認められた手紙。それを解読したところによると、とある田舎に住む紳士の身に危険が迫っているらしい。そこへスコットランド・ヤードの警部が現れ、件の紳士が昨夜殺害されたので助力を願いたいとの申し出が。早速ホームズは、相棒のワトスンを伴い現地へと飛んだ――。

『恐怖の谷』<新訳シャーロック・ホームズ全集> アーサー・コナン・ドイル_e0033570_6165378.jpg3ヶ月毎の刊行というペースだった<新訳シャーロック・ホームズ全集>も、とうとう全9巻完結となりました。これまでもホームズ物のパロディ、パスティーシュの類は何冊か読んできましたが、もうこれから新しく読むことの出来るのは”贋物”しかない、というのはかなり寂しいことです。
小説としては、「面白かった」と思える作品は実はそれほど多くはないのですが、ホームズやワトスンといったキャラクター、それに独特の世界観には大いに惹き付けられるものがありましたので、これからはどんなに優れた作品に出会おうとも所詮は紛い物なのだなと思うと残念ですね。

この作品は発表順としては7冊目となります。ホームズ最後の事件という訳ではないのですが、長編作品としては最後ということでこの全集では一番最後の配本となったようです。
前半と後半、二部構成になっていて、前半はホームズにとってリアルタイムで起った殺人事件を解決するまでのお話。そして後半では過去に遡って、今回の事件が起った因縁話が披露されています。最後に付いたエピローグを除くと後半ではホームズは一切登場せず、全体の分量も後半の方が長いので、ホームズの印象は若干薄めになっています。そして物語としても前半部分のトリックよりも、後半部分のどんでん返しの方が組み立ても上手くいっており、面白いと思います。ということは、独立した作品としてもホームズのシリーズ物の一冊としても、あまり出来は良くないということになりますが、意外性と言う点ではシリーズでも上位に来るのではないでしょうか。
by odin2099 | 2008-02-08 06:18 | | Trackback | Comments(0)

「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”


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