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『月をめざした二人の科学者/アポロとスプートニクの軌跡』 的川泰宣

冷戦時代のアメリカとソ連は、宇宙開発という分野でも激しく競い合っていましたが、両陣営にはそれぞれ指導的存在となった科学者がいました。
ドイツに生まれ、大戦中はナチス政権下でミサイル開発に従事し、戦後はアメリカに渡り、遂には人類を月に送り込んだウェルナー・フォン・ブラウン。ソ連に生まれ、スターリンの粛清の嵐の中で囚人生活を送り、戦後はドイツの残した技術を吸収することで祖国に尽くしたセルゲーイ・パーヴロヴィッチ・コロリョフ。二人の天才は、戦争や大国同士のエゴを利用しながらも、少年の日の夢を実現するためにその生涯を捧げたのです。

『月をめざした二人の科学者/アポロとスプートニクの軌跡』 的川泰宣_e0033570_2144259.jpgフォン・ブラウンの名前は知っていましたが(『ガンダム』ファンなら御馴染みですよね?)、コロリョフという名前はこの本で初めて知りました。実際、彼の暗殺を恐れていたソ連当局は、存命中には彼の存在を公表しなかったというから、それも無理からぬところかも知れません。
年齢はコロリョフの方がフォン・ブラウンよりも5歳年長のようですが、ほぼ同世代。米ソの競争は、そのままこの宿命のライバルの対決だったと言っても過言ではなさそうです。
その生い立ちから二人の生涯を追っていくというのがこの本の内容なのですが、戦争と言う暗い影が射している中でも夢を失わない二人の姿勢には敬服します。ただ手段として戦争や冷戦を利用したといいつつ、一方では戦争に協力していた事実は批判に値するのかも知れません。その複雑さもまた興味深くはありますが。

ちなみに、生前遂に両雄は相見えることはなかったということです。実際にお互いがどの程度意識し合っていたかはわかりませんが、そういう微妙な関係もまたロマンを感じさせます。
by odin2099 | 2008-02-20 21:44 | | Trackback(1) | Comments(0)

悪文礼賛


by Excalibur(エクスカリバー)
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