この作品はこれまで、映画が3本、TVドラマが5本も作られているそうです。
『八つ墓村』と並んで、金田一耕助シリーズの、というよりも作家・横溝正史の代表作ということになるでしょうか。
ということでTV版としては最新ヴァージョンを、録画したまんま放ったらかしだったビデオを発掘してきてようやっと観ました。
金田一耕助役は
稲垣吾郎。なんと通算で
20人目の金田一役者になるんだそうです。
お話は毎度おなじみのもの――ではあるのですが、冒頭に
『誰も知らない金田一耕助』と題したプロローグ部分が付きます。

若かりし頃の金田一耕助はアメリカに渡り、麻薬中毒になったりもしているのですが、そこで日本人絡みの殺人事件を解決してその才能を発揮する、という過去があることが色々な作品で断片的に語られているようなのですが、今回はこれを初めて映像化したことがウリのようです(事件そのものはこのドラマ用のオリジナルだそうで、最後には後の長官フーパーがFBIの捜査官として顔を出すというサービスぶり)。
またこのプロローグ部分とエンディングには作家・横溝正史が登場してきます。
金田一耕助が活躍する小説は、横溝先生が金田一耕助本人から聞いたことを書き留めたという設定のようですね。
本編が始まると、意外にもドラマは
原作に忠実に進行していきます。
ところが見せ方は所々市川版を意識した部分がなきにしもあらずで、また市川版同様の改変を施した箇所もあるのが中途半端ですねぇ。
どうせアレンジするのであれば、このドラマ版独自のもので徹底して欲しかったところです。
そしてTVドラマということもあってか、伏線の張り方が非常に親切でわかり易いものになっていますので、熱心なファンには物足りないでしょうが、稲垣吾郎をキャスティングした段階で若い人向け、金田一耕助に馴染みのない人向けということは明白ですから、初心者への入門編としては悪くないんじゃないかと思います。

キャスティングはなかなか豪華で、古館弁護士役の佐野浅夫と松子役の三田佳子は圧巻でした。
岸田今日子が市川版と同じ役で出演しているのはオマージュを捧げすぎな気もしますが、はまり役なのも事実ですね。
また市川版で青沼菊乃を演じた佳那晃子が今度は梅子を演じているのは、狙っているのか、それとも偶然なのでしょうか。
稲垣=金田一は早口なのが気になりますが、なかなか雰囲気を掴んでいるように思えます。
ただ彼が髪を掻き毟ってフケが落ちても、どことなく清潔感が優ってしまうのは彼の”品”の問題でしょうか。
ただ、ちょっぴり残念だったのは珠世を演じた加藤あい。
まぁ誰が演じても…ではありますし、彼女も充分に魅力的だし頑張っているのは認めますが、”絶世の美女”を演じるにはやや荷が勝ち過ぎたかなぁという印象ですね。