『2010年』(1984)
2008年 03月 25日

前作では序盤にしか出て来ない計画の責任者だったフロイド博士が今度は主人公になり、前作で残された謎の解明を試みるという一篇で、続編と言うよりも、解決篇、解答篇といったところ。だがそれは、あくまで前作の製作主体だったスタンリー・キューブリック抜きの、もう一人の生みの親アーサー・C・クラークによる模範解答という色合いが強いので、前作にはもっと別の解釈も成り立つだろう。
前作ではクラークとキューブリックによってまとめられたストーリーが、それぞれキューブリック版(映画)、クラーク版(小説)という形で発表されているが、今回はクラークが単独で小説(『2010年宇宙の旅』)を執筆、その後でそれを”原作”として映画化したという経緯からも明白だ。
前作ではウィリアム・シルベスターという俳優が演じていたフロイド博士を、今回はロイ・シャイダーが演じている。勿論、前作の製作からかなりの時間を経ていることもあるだろうが、やはり大作の顔として相応しい格のある役者を選んだということだろう。また、地味だった前作の出演陣に比べると、本作には他にジョン・リスゴウ、ヘレン・ミレン、ボブ・バラバンら渋い個性派が顔を揃えている。そんな中、前作からはボーマン船長役でキア・デュリアが、HAL9000の声としてダグラス・レインがそれぞれ同じ役で出演しているのが嬉しい。
前作に比べればアップテンポで、米ソ対立によるサスペンスなども盛り込まれ、娯楽性は高まっている。それに何よりHAL9000が異常をきたした理由が明らかにされるとあって、単純に観ている分には前作よりも楽しめる。以前、映画館で『2001年』と『2010年』の二本立てを観たことがあったが、そのお陰もあってかあまり苦にならなかった思い出がある。
ただ何分前作あっての本作ということで独立性が乏しく、またコンピューターの進歩やソ連の崩壊など、現実が物語を追い越してしまっている部分も多いので、今なお未来性を保っている前作に比べると、早くも古臭さを感じさせてしまっているのは残念。
クラークの小説版には『2061年宇宙の旅』、『3001年終局への旅』といった更なる続編があるが、そちらの映像化企画は動いていないようだ(確か『2061年』は以前、日本でラジオドラマ化されているはず)。
偉大な前作に対して軽視される傾向のある本作だが、実は『機動戦士Zガンダム』などこの作品の影響を受けた作品は多い。もっと再評価して欲しいものである。
それにしても先月にはロイ・シャイダーの訃報が届き、今またクラークまでもが鬼籍に。図らずも二人の追悼になってしまったのが、観ていて辛かった。

「2001年宇宙の旅」の続編だそうです。私は「2001年〜」は未見なのですが、続編が存在することも全く知らず、見始めて初めて気づきました(^^ゞ <あらすじ> 2001年、月面で発見された謎の黒石板、モノリス解明のために、アメリカの宇宙船ディスカバリー号が木星へと旅立ったが、失敗に終わった。そして2010年。ディスカバリー号の計画責任者のフロイド博士(ロイ・シャイダー)、HALの生みの親チャンドラ博士(ボブ・バラバン)、ディスカバリー号のエンジニアのカーノウ(ジョン・リスゴー)の3人は、ソビエトのタ...... more

「2001年宇宙の旅」の続編、「2010年」がムービープラスで放映されました。まだまだ再放送があります。 3月16日(木)8:45〜 3月18日(土)23:00〜 3月 30日(木)23:00〜 「2001年宇宙の旅」も3月 22日(水)13:15〜 3月 24日(金)16:15〜 3月 29日(水)2:45〜 放映されます。 ... more
まあ、後日アップをゆっくり見たらそれなりに年を重ねてはりましたが…それと、2010年のフロイド博士と2001年でのフロイド博士がシンクロするまで随分ヒマが掛かりました。あっちはボーマンとプールという名前しか覚えてなくて…
メイクなどの力もあるのでしょうが、ホント、誰が見てもオリジナルのボーマン船長だ、とわかりますもん。
これで16年(実際の撮影期間を考えると20年近く)経っているとはねぇ。
フロイド博士は、ロイ・シャイダーだとイメージが前作と違いすぎです。
いきなり小さな男の子が出てきたり、妙に若い奥さんがいるのも不自然。
前作では月へ向かう途中、小さな女の子にテレビ電話掛けていたのに。
・・・と思っていると、その娘は17歳になっているし、前の奥さんとは死別してるという話が出てくるし。
小説と比べるとこの映画版は随分と違う点もあるのですが、クラーク自身は気に入っていたようですね。