小学校6年生の女の子・上杉リナは、父親から夏休みを「霧の谷」で過ごすように勧められ、静岡から一人で東京、仙台と乗り継いで東北へと旅をすることになります。
しかし目的地である田舎の小さな駅に着いたものの町の人は誰も「霧の谷」のことを知らず、来ているはずのお迎えもいません。
おまわりさんから、山の中にある「銀山村」の辺りじゃないかと教えられ、親切なおじいさんのリヤカーつきこううんきに乗せられ、途中まで送って貰うことになりました。
うす暗い森の中で霧につつまれたリナは、ふと気付くと外国のような不思議な町に辿り着いていました。
そこでリナを迎えたのは、いじわるそうなピコットばあさん。
ピコットばあさんの屋敷は下宿屋であり、自分の手で生活費を稼ぐように言われます。
リナはこの町で働くことになり、様々な不思議な人々と出会うことになっていくのです。

このお話が発表されたのは、もう今から30年以上も昔のこと。
それ以来、児童文学・ファンタジーの傑作として読み継がれて来たとのことですが、実は全然知りませんでした。
学校の図書館で出会っていてもおかしくないはずなんですが…それとも出会っていたのかな?
その時には興味が持てずに素通りしていただけなのかも知れません。
で、ようやくこの本の存在を知ったのは7年ぐらい前のことです。
そう、宮崎駿監督の『千と千尋の神隠し』がこの作品を参考にしていると聞いてから――。
実際、宮崎監督はこの作品の映画化を考えていた時期があって、ジブリ美術館にはイメージボードも展示されていました。
そこに描かれていたリナちゃんのキャラクター原案は、なんとそのまんま千尋ちゃんに受け継がれています。
ストーリー自体はまるっきり別物なのですが、女の子が異世界で働くようになること、根っからの悪人ではないけれど、いじわるなおばあさんが出てくることなど、雰囲気はかなり似ています。
といってもこの作品を、単に『千と千尋の神隠し』の元ネタという興味だけで読むのは作者に対して失礼な話ではありますね。
もっとも原作クラッシャーの宮崎監督のこと、本当にこの作品を映画化しても『千と千尋の神隠し』とあまり変らないテイストの作品になってしまった可能性もありそうですが…。
ただ自分の感覚とこの作品の世界観は随分違います。
なので純粋に作品世界の中で遊べたかというと、ちょっと戸惑う部分の方が多かったかも知れません。
今回読み直してみたのですが、すいすい読める反面、何でこういう設定なんだろう?と思ってしまった部分も無きにしも非ずでした。