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『ザブングルグラフィティ』(1983)

1983年の春休みには『幻魔大戦』『クラッシャージョウ』、そして『宇宙戦艦ヤマト/完結編』とアニメファンをターゲットにした大作映画が3本も公開されましたが、夏休みに目を向けてみると目立った作品がない。
そこでサンライズと松竹がアニメファンの動員を見込んで送り込んだのが、この『ザブングルグラフィティ』と『ドキュメント太陽の牙ダグラム』の2本立て。
それぞれTVシリーズ『戦闘メカ ザブングル』『太陽の牙ダグラム』の再編集版で、片や『ザブングル』は全50話、『ダグラム』に至っては全75話という長丁場を、どちらも1時間半弱でまとめようという無謀以外の何ものでもない企画であります。
実際、『クラッシャージョウ』を観に行ってこの2本立ての特報が流れた時は一瞬目を疑ったもんです。

『ザブングルグラフィティ』(1983)_e0033570_2373647.jpg
題名が『戦闘メカ ザブングル』のままではなく、『ザブングルグラフィティ』――「グラフィティ」即ち「名場面集」と変更されたことでもお分かりのように、この作品は端からストーリーを追いかけようとはしちゃいません。
流石にそりゃ無理だってことをスタッフも重々承知の上でしょう。

で、1話から最終回までの中から「これは」というシーンをピックアップし、ファン向けの楽屋落ちネタなども盛り込みながら作り上げたのがこの作品。
当然これを観ただけで、ストーリーや設定が理解出来るという代物じゃございません。
ダイジェストにすらなってませんからね。ファンのためのイベント・ムービーといったところです。

と・こ・ろ・が……そんな作品にも関らず、予備知識なしで観ても、結構楽しめるんじゃないかなぁと思えるところが富野監督の凄いところかも知れません。
今観ても「そうだ、そうだ、こんなお話だったっけ」と記憶を呼び覚ましてくれますし、異論もあるでしょうが個人的にはちゃんと映画になっていると思っています。
いや、なっているんじゃない・か・な…?

『ザブングルグラフィティ』(1983)_e0033570_2375525.jpg『ザブングル』は富野監督の中でも、結構異色な作品だと思います。
先ず作品自体の企画は既に立ち上がっていて、予定されていた監督が降板したために急遽途中参加したという経緯が異色です。
しかも『ガンダム』、『イデオン』の映画化の作業中という”超”多忙な時期だった訳ですから、現場の混乱振りは想像するに余りあるでしょうね。
その混乱振りは、フィルムにも表われてしまっています。

『ルパン三世/カリオストロの城』から臆面もなくショットを頂いてきたりしてギャグや明るさを強調する反面、中盤以降は富野色の濃いドロドロしたドラマが繰り広げられるなど振幅の幅が広く、しかもそのあたりが上手く融合していないという為体。
それでいながら、元気一杯に跳ね回るキャラクターたちは充分に魅力的という矛盾した作品なのですねぇ。
自分は本放送でちょこちょこ観ていて、後で再放送で全部観ているクチなのですが、一気に観たせいか一気に惹きこまれてしまいました。
この作品がトミノ作品の中で一番好きだ、という人も少なくないみたいだし。

そんなわけで今だからこそ、「名場面集」じゃない総集編が観てみたいなぁ、などと考えている今日この頃です。
90分×2本ぐらいで収まるんじゃないかなぁ。

Commented by よろづ屋TOM at 2008-04-27 04:58 x
いや、エクスカリバーさんの記事を読むまでダグラムが併映だったことを忘れてたくらい、ちゃんとこっちは印象に残ってますね。
このチラシも長い間塩ビの下敷きに入れて会社で使ってましたし。私にとってこの作品は実に奇妙な見方をしてまして、本放送の時社会人一年生になってたんですが当時ビデオはバブル初期だったにもかかわらず庶民にはとうてい手の届かないシロモノで、それでもアニメが大好きだった私は120分テープに留守録し、会社の行き帰りに音だけ聴いて、『アニメック』に発表されてたキャラの設定書から頭の中に動画をイメージして楽しんで?たんです。今もありますよ、当時の雑誌は。

はじめて動くジロン・アモスを見たのは、いち早くビデオを手に入れた友人宅での鑑賞会。すでに放送は最終回近くでした。
結局すべての動画を見たのは一年以上あと、自前のビデオを手に入れてからのこと。当時は機械がウン十万、60分テープが2000円近くしたような。
でも富野作品と云うより、湖川友謙作品って印象が強いです。あ。未組み立てのウォーカーマシンがほとんど一式袋から出しもせずに残ってますわ。誰かこーてー。
Commented by odin2099 at 2008-04-27 10:00
>TOMさん

本放送では多分10本も観ていないだろうと思います。
映画が公開される頃に再放送があって、それで殆ど全部を観て、見逃した回を後で友人にビデオで見せて貰ったんじゃなかったかなぁ。まだ自分ではビデオデッキ持ってなかったもので(苦笑)。
僕がビデオを持ったのはこの2年後くらいですが、その時でもテープは高かったですよね。安い店を探したものです。で、安い!と思って買ってくると、これが必殺のワカメテープ!泣くに泣けませんでした・・・。安物買いの銭失いとはよく言ったものです。
ビデオを持つ前には、録音もよくやりましたね。
テープが痛んじゃったもので、数年前に泣く泣く大半のテープを処分しました。『宇宙空母ブルーノア』とか『宇宙戦艦ヤマトIII』とか『円卓の騎士物語 燃えろアーサー』とか、本放送の際の録音テープが残っていたんですが・・・・・・。

(注)ワカメテープ
使うとすぐ伸びちゃう粗悪品のテープ。勿論、録画・再生に支障有り。デッキにテープが絡まって故障の原因になることも・・・。
by odin2099 | 2008-04-26 23:11 |  映画感想<サ行> | Trackback | Comments(2)

「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”


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