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【徒然なるままに・・・】

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「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”

『ミクロの決死圏』(1966)

脳に損傷を追った患者を救うため、特別な医療チームを編成し潜水艇に乗せ、その潜水艇ごと細菌大に縮小して体内に送り込み、直接患部を治療しようというSF映画。
凡そ実現可能とも思えない荒唐無稽なストーリーだが、外科手術が不可能となれば直接乗り込んで何とかして欲しいという気持ちになるのは納得出来るし、宇宙だ、過去だ、未来だ、ということではない新たな冒険世界を開拓したのはアイディア。人間の身体の中という、誰も見たことのない神秘の世界を、タップリとスクリーン上に描き出してくれる。

『ミクロの決死圏』(1966)_e0033570_2334079.jpgもっとも誰も見たことがないからといって嘘八百を並べ立てているのではなく、しっかりと科学考証は行われているようだ。
また真偽の程は不明だが、シュルレアリスムで知られるサルバドール・ダリが美術面で一枚噛んでいるとの噂もある。いずれにせよ人体内の幻想的なセットは”Fantastic Voyage”(原題)に相応しいものだ。

またこの患者が重大な機密を持った東側から西側への亡命者であり、亡命を阻止しようとした東側の襲撃により重傷を負ったこと、潜水艇内でも妨害工作があり、チーム内の誰かが裏切り者の可能性があることなどスパイ映画のムードも持ち、丁度「007」ブームの影響下で作られたことを思い起こさせてくれる。
そして縮小技術自体も未完成であり、60分という時間制限が設けられている点もサスペンスを盛り上げている。

原作として名前が挙がっているのはオットー・クレメントとジェイ・ルイス・ビックスビーの二人だが、元ネタは当時アメリカで放映されていた、手塚治虫原作のTVシリーズ『鉄腕アトム』の1エピソードだとする説があるが、もはや真相は闇の中だろう。
ちなみにノベライズを担当したのは、SF界の巨匠アイザック・アシモフで、後にオリジナルの続編も発表している。監督は職人リチャード・フライシャー

出演者はスティーヴン・ボイド、ラクエル・ウェルチ、エドモンド・オブライエン、アーサー・ケネディ、アーサー・オコンネル、ドナルド・プレザンスといった目面だが、注目すべきは紅一点のラクエル・ウェルチ
この作品が実質的なデビュー作だったようで、キャラクターとしては決して大きなものではないのだが、一人だけ身体にピッタリとフィットしたウェットスーツを着用して観客の目を楽しませてくれる重要な役どころ。体内の海での活動中、彼女の身体に細胞組織が絡みつき締め上げるというシークエンスがあるのだが、その後はチーム総出で彼女の身体から細胞をむしりとるというシーンがとってもエロティック。勿論狙っての演出だろうが、どことなく出演者も嬉しそうだ。以前に観たときはこのシーンしか覚えていなかったくらいだ。

SF映画の舞台として新しい世界を開拓したのは良いのだが、手間隙が掛かるのか、それともストーリー作りに制約が大きいのか、ジャンルとしてはあまりヴァリエーションが広がらず、有名どころではジョー・ダンテ監督作品の『インナー・スペース』ぐらいだろうか。
ところがこの作品にも以前からリメイクの話があり、現在はローランド・エメリッヒ監督のプロジェクトとして進められている模様。しかもそのプロデュースを務めるのがジェームズ・キャメロンとあっては、これはかなり気になる気になる。
by odin2099 | 2008-05-27 23:35 |  映画感想<マ行> | Trackback(11) | Comments(10)
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Tracked from samuraiの気になる映画 at 2008-05-29 13:56
タイトル : ミクロの決死圏
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Tracked from 楽蜻庵別館 at 2008-05-29 21:06
タイトル : <ミクロの決死圏> 
1966年 アメリカ 101分  原題 Fantastic Voyage 監督 リチャード・フライシャー 製作 ソール・デヴィッド 原案 オットー・クレメント  ジェイ・ルイス・ビクスビー    デヴィッド・ダンカン 脚本 ハリー・クライナー 撮影 アーネスト・ラズロ 美術 (美術協力)サルヴァドール・ダリ SFX L・B・アボットほか 出演 グラント:スティーヴン・ボイド    コーラ・ピーターソン:ラクエル・ウェルチ    カーター将軍:エドモンド・オブライエン...... more
Tracked from 風に吹かれて-Blowi.. at 2008-05-29 23:10
タイトル : #495 ミクロの決死圏
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(1966/リチャード・フライシャー監督/スティーヴン・ボイド、ラクエル・ウェルチ、アーサー・ケネディ、エドモンド・オブライエン、ドナルド・プレザンス、アーサー・オコンネル、ウィリアム・レッドフィールド、ジェームズ・ブローリン/100分)... more
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タイトル : 「ミクロの決死圏」
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Commented by よろづ屋TOM at 2008-05-28 00:42 x
何度もTVで観ましたね〜。大好きでした。
ちなみに『インナー・スペース』公開時はたしか『ミクロの決死圏』のリメイクだと聞かされた記憶がありますが真偽のほどは自信ありません。

おお〜、これもリメイクの話が出てますか。科学考証の点でもっとも今気になるのは“マイクローン化”技術でしょうねえ。できることならE=MC2という、現時点で不変の原理をどう納得させてくれるかなんですが。
あと、実際はどうか知りませんが、私の中でこれと対をなすのは『アンドロメダ…』なんですよ。それと秘密の基地というシチュエーションのせいか、『人造人間クエスター』も必ず一緒に思い出してしまうんです。エクスカリバーさんならご存じですよね。
Commented by odin2099 at 2008-05-28 23:49
『インナースペース』、確かにそんな噂もながれていたような気がします。
内容は・・・まぁ、パロディですよね。
でも「縮小して人体内に入る」という点を除けば、殆ど別物なんですが。むしろ巨大ロボット物っぽい雰囲気もあるような(ある意味で操縦してるし)。

『人造人間クエスター』は、ジーン・ロッデンベリーが企画したTVシリーズのパイロット版ですよね。
結局番組は実現しなかったのですが、このパイロット版だけは日本でも何度か放送されているそうで。
ただ、観たいなぁと思い出したのが80年代に入ってからで、その頃になるともうTVでもやってくれなくなっちゃったんですよね。
こちらではビデオ化もされていないので、気になってる作品ではあります。

『アンドロメダ・・・』はリクエストにお答えして(?)、感想をupしました。
前に本家サイトにもupしているので、殆ど同じ文章になっちゃいましたが(苦笑)。
Commented by よろづ屋TOM at 2008-05-29 02:23 x
なんとっっっっっ。私のために…(つД`);; 感激です。
クエスターはNHKだったと思うんですが、都合3回は観たように思います。主人公クエスターの声が家弓家正さんだったかな。

でね、ぶっちゃけた話…一話だけで充分完結してしまってる話なんですよ。一応、先を匂わせて終わってるんですが、むしろパイロット版のつもりが完成度高すぎたのかも。
登場人物は少ないけど、ロケも多いしセットも大がかりで、けっこうお金もかかってたような気がします。そうですか…ビデオ化されてないんですか。私ももう一度観てみたかったのにな。
(でもあきらめきれずにググったらニコ動に三分割でアップされてました!すげー時代だ)

たしかにインナースペースはSFコメディですね。私はデニス・クエイド主演つながりで『第五惑星』が大好きなんですけどね。
Commented by samurai-kyousuke at 2008-05-29 14:01
この映画と「恐竜百万年」のラクエル・ウェルチは、子供心にも印象的でした。ブドウジュースの『ウェルチ』という名前を聞いてもラクエル・ウェルチのお姿が脳裏に・・・。(笑)
Commented by chibisaru at 2008-05-29 23:20 x
手作り感あふれる映像で、昔の作品とは思えないくらい新鮮な気持ちで見れました。
肺の中で迷子?になりかけていたシーンが、やっぱり肺の中ってこんなになってるんだーと人体模型のことを想像しつつ、白血球に攻撃されたりと色々楽しかったです。

ラクエル・ウェルチのナイスバディには目の保養させてもらいましたし(笑)
Commented by odin2099 at 2008-05-30 23:40
>TOMさん

なんか呼んでるなぁ~という気がしました(笑)。
というより、流れを読まれてるみたいですね。

『クエスター』は、今見るとだるいのかも知れませんけれども気になりますね。
『第5惑星』は観たことないです。確か当初の監督が途中で降板して、ウォルフガング・ペーターゼン監督が纏め上げたというやつですね。
なんか公開当時から食指が伸びないんですけれども・・・(苦笑)。
Commented by odin2099 at 2008-05-30 23:42
>samurai-kyousukeさん

うーん、やっぱり「流れ」を読まれてるなぁ(苦笑)。
二つの作品だけで、永遠にSFファンのイコンとして輝き続けるでしょうね。
本人は嬉しくないかも知れませんけれど(爆)。
Commented by odin2099 at 2008-05-30 23:48
>chibisaruさん

事細かく人体図面などを見せてくれてはいるんですが、今一つどこにいるのかがわかりづらく感じたのは自分だけ?

知的美人というタイプとは凡そかけ離れているので、ちっとも女性科学者には見えないラクエル・ウェルチですが、SF映画的にはOKですよね♪
Commented by 小夏 at 2008-06-02 10:15 x
これは面白かったですね~
昔、何度かTVで見ましたけど、初見時の衝撃は今でも忘れられません。
今だったら「人間がミクロ化して云々~」なんてトンデモ展開、思いっきり笑い飛ばしていたかもしれないと思うと、子供の頃に観ることができて本当に良かったです。
とはいえ、なんせ昔のことなもので、紅一点がラクエル・ウェルチだったことも背景にそんな胡散臭い思惑があったこともほとんど覚えていなかったりするんですよねぇ。
今、改めて観たらまた違う感覚で観れるのかな。
Commented by odin2099 at 2008-06-02 20:40
>千夏さん

「小さくなる」ことは大嘘なんですが、その前後、というか作品全体は理詰めで進んでいきますので、意外に疑問を持たずに見れてしまうものです。
で、人体内の冒険というアイディアがあって、それからプロットが練られたはずなので、その背景設定(東西冷戦の最中)そのものは、どうやら二転三転したみたいで。
昔の紹介記事を読むと、当初は宇宙旅行中の飛行士や犯罪者の体内へ、というストーリーが出てきてます。
まぁ実際は、その人が誰なのかということをわからなくても、特に問題なく楽しめますが(苦笑)。
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