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『ドーバー海峡殺人事件』(1984)

生前のアガサ・クリスティーが、自作の中でのお気に入りの一つに挙げていたという『無実はさいなむ』を映画化したもので、製作はEMIに替わってキャノン・フィルム
この頃のキャノンの躍進振りは凄まじいものがあった。
監督はデスモンド・デービス。

『ドーバー海峡殺人事件』(1984)_e0033570_1147395.jpg海辺の町のとある屋敷を、一人の男が訪ねて来た。
二年ぶりに南極探検から戻ってきた彼は、その屋敷に住む知人の以前落とした住所録を届けに来たのだが、実はそこでは二年前に夫人が殺されるという事件が起っており、件の知人はその犯人として既に処刑されているというのだ。
犯行時間には自分と一緒にいたことから知人が無実であることを知る彼は、残された家族や警察に再審を掛け合うのだが、何故か一家は口を閉ざしたままで今の結末に満足しているという。
無実の男を処刑台に送り込んだことで負い目を感じた彼は、警察の妨害にも関わらず独自に調査を始めるのだが、やがて一家に纏わる様々な思惑を知ることになる。
そして誰もが動機を持っていることを。
やがて第二の殺人事件が起ってしまう…。

クリスティーの映画化というと「オールスター・キャストの華やかなもの」というのが定番だが、この作品の出演者はドナルド・サザーランドを筆頭に、フェイ・ダナウェイ、クリストファー・プラマー、サラ・マイルズ、ダイアナ・クイック、イアン・マクシェーン、アネット・クロスビーという具合にかなり渋いもの。
ポワロやマープルといった名探偵も登場せず、主人公は大学教授の素人探偵で、展開もかなり地味である。
そして画面も暗く、邦題の如きスケールの大きな超大作ではないし、モダン・ジャズを使った音楽も、画面を盛り上げているとは言いがたい。

ということもあってか、この作品を観るのは初めてじゃないにも関わらず、ストーリーは全くと言って良いほど覚えていなかった。
その分、犯人探しの楽しみは再び味わうことが出来たのだけれども、何となく後味の悪い結末といい、面白かったとはとても言えそうもない。
聞けば原作小説とはかなり趣を異にしているとのことなので、先ずはそちらを読まねば。

by odin2099 | 2008-06-28 11:47 |  映画感想<タ行> | Trackback | Comments(0)

「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”


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