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『キャプテン・アメリカ/卍帝国の野望』(1990)

第二次大戦中、人体改造によって最強の兵士を生み出そうとするナチス・ドイツ。
計画の中心だった科学者は、少年を実験台にすることを知り脱出、アメリカへと亡命する。
ヒトラーの野望に危機感を抱いた合衆国政府は、それに対抗するために極秘で超人兵士計画を推進、志願者の中から選ばれたスティーブを”キャプテン・アメリカ”へと改造した。
キャプテン・アメリカはナチのロケット基地へと潜入するが、そこに待ち構えていたのはレッド・スカル。
彼こそ、嘗てナチによって改造された少年の成れの果てだった。
キャプテン・アメリカは果敢にレッド・スカルに挑むが力及ばず、ホワイトハウス攻撃用のロケットに縛り付けられてしまう。
だが決死の覚悟で軌道を変更、ロケットはアラスカへと墜落する。
そして1990年代、生き延びたレッド・スカルは裏社会に君臨していた。
そんなある日、アラスカの氷の大地から掘り起こされた氷塊。その中には…?!

『キャプテン・アメリカ/卍帝国の野望』(1990)_e0033570_2395142.jpg1970年代後半から『スーパーマン』シリーズをヒットさせ、今度は『バットマン』をもスクリーンで大暴れさせようとしているライバルD・Cコミックに対抗して、自社ヒーローの映画化企画を売り込んでいたマーベル・コミックがやっと実現させたヒーロー映画。
難産が続いていた『スパイダーマン』(この頃はカロルコ社が権利を持っていた)や、あまりの出来の酷さに封印されたと噂の『ファンタスティック・フォー』と違って、何とか完成にこぎつけた。

製作はメナハム・ゴーラン率いる21センチュリー・フィルムだが、実はこの作品、キャノン・フィルム末期に作られたもの。
確かキャノンはこの前に『スパイダーマン』の映画化も狙っていたはずだが、それを果たせず『スーパーマン4/最強の敵』なんぞを作っていたが、マーベル・ヒーローの映画化は念願の企画だったのかも知れない。
だが途中でキャノンは潰れてしまいお蔵入り、メナハム・ゴーランはすかさず新会社を立ち上げたものの、結局はビデオ・スルーになってしまった。

マーベル・コミックのヒーローでは最古参(だったかな?)、星条旗をモティーフにしたド派手なコスチュームに身を包んだキャプテン・アメリカだが、武器は盾だけだし、かな~り弱い。
これが後にマーベルのヒーロー軍団を束ねる存在(文字通りの”キャップ”)になるんでしょうかねぇ。
緒戦であっけなくレッド・スカルに負け、辛うじて最大のピンチを抜け出したものの、その後50年間もアイスマン状態に。
で、偶然に復活したものの、新しい時代に付いていけないわ、昔の恋人はおばあさんになってるわ、とカルチャーショックに見舞われ、おまけに彼を助けようとした人々を悉く不幸にするなど良いところなし。
一方のレッド・スカルにしたところで、闇の世界で彼がどんな実力を持っているのかは不明だし、”超人”といったところで力が強かったり、頑丈だったり程度で、空を飛んだり、目から怪光線を発射したりといった特別な能力はない。
何とも地味な戦いを繰り広げるのみだ。
これならお蔵入りも仕方なかったのかなぁ。

出演者も地味なメンバーで、マット・サリンジャー、ロニー・コックス、ネッド・ビーティ、ダーレン・マクギャビン、マイケル・ヌーリー、メリンダ・ディロン、キム・ギリンガム、スコット・ポーリンと並べてみても、さて何人の名前を知ってますかぁ?というレベル。
お話も素直に面白いとは言いかねるものの、何故か嫌いにはなれない作品。
前に観た時も結構楽しんだし、今回もそれなりに楽しく観ることが出来たのは不思議。
自称”クロサワの弟子”アルバート・ピュン監督にしては上出来の部類かと。

マーベル・コミックは最近、ようやく自ら映画製作に乗り出すようになったが、その中にはこの作品のリメイク企画もあるようだ。
銀幕で他のマーベルヒーロー、スパイダーマンやアイアンマン、Xメン、ファンタスティック・フォーらと共闘する姿も何れ観られるかも知れない。
そうなれば楽しみだなぁ。

Tracked from 「はじけろ煎茶道」 at 2008-08-21 08:11
タイトル : キャプテン・アメリカ 〜帝国の野望〜
==== キャプテン・アメリカ 〜帝国の野望〜 ==== '''「ありがとうキャプテン・アメリカ、我々はもう大丈夫だ!」''' 実のところ、私にとってDVD化を望むNO.1がこの映画だったりします(笑)。 バットマン、スパイダーマンの陰に隠れ日本では今一つ人気の無いキャプテン! 実際1990年制作のこの映画も日本では未公開作品となる… VIDEOでの販売とテレビ放映のみだったようです。 私がこの映画を知ったのは、深夜の映画放送で...... more
Commented by so-kei♪ at 2008-08-21 08:10 x
TBありがとうございました!
「お話も素直に面白いとは言いかねるものの、何故か嫌いにはなれない作品」言い得て妙な表現ですが、不思議な魅力いっぱいの作品ですね。リメイクされてもズッコケの愛されるヒーローでいてもらいたいものです(笑)。
Commented by よろづ屋TOM at 2008-08-21 13:47 x
コスと名前だけは知ってましたが、そーゆー話だったとは。
しかも進んで自ら改造(どんな改造だったんですか?サイボーグ?)を受けるとは。しかし少年を実験台にするのは嫌ったクセに志願者なら本番改造するのはええんかしら。

それにしてもナチスにせよ戦前の日本にせよ、いろーんな特殊兵器を作ってたんですねえ。フランケンシュタインだの轟天号だの鉄人だのローレライだの(キリがないっすね)…

≫出演者も地味なメンバーで

いやいや、ネッド・ビーティとダーレン・マクギャビンくらいは知ってますよ。『コルチャック』好きでしたもん。
Commented by odin2099 at 2008-08-21 22:52
>so-kei♪様

どこまで本気で作っていたのかわからない作品ではありますが(苦笑)、少なくても現場のスタッフは映画に対する情熱があったように見受けられます。
現在公開中の『インクレディブル ハルク』や、もうすぐ公開される『アイアンマン』でも伏線が張られているそうなので、キャップの本格的な復帰に期待したいところです。
きっとこの作品ほどズッコケなヒーローではないと思いますけれど・・・?
Commented by odin2099 at 2008-08-21 23:03
>TOMさん

人体改造といっても、身体を切り刻んで人工臓器を埋め込んで、というのではなく、筋肉を増強したり、細胞を活性化させる、というものです。
なので常人より耐久力があったり、怪我からの快復が早かったり、身のこなしが素早かったりするのです。
映画でも主人公のスティーブは足を引き摺ってる描写がありましたが、障害のある人や虚弱体質の人でも最強の兵士になれる、というのがコンセプトの計画だったようですね。
原作だと特殊な血清を注入しているようですが、映画ではそのあたりはハッキリと描かれてはいませんでした。
第二次大戦秘話、という形のSFモノは日本でも多いですねー。

>出演者

メリンダ・ディロンやマイケル・ヌーリーは自分も知っていますけれど、一般的に有名な俳優さんとは言いかねると思いますけど(苦笑)。
by odin2099 | 2008-08-20 23:12 |  映画感想<カ行> | Trackback(1) | Comments(4)

「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”


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