『哲学探偵』 鯨統一郎
2008年 10月 27日
事件解決の手掛かりを求めて競馬場にやって来た二人の前に現れたのは、哲学好きで短歌が趣味の風変わりな男だった。
ところがこの男が、二人に驚くべき推理を披露する?!
「世界は水からできている(タレス)」、「汝自身を知れ(ソクラテス)」、「われ思う、ゆえにわれ在り(デカルト)」、「人間は考える葦である(パスカル)」、「純粋理性を求めて(カント)」、「厭世主義(ペシミズム)の暴走(ショーペンハウアー)」、「神は死んだ(ニーチェ)」、「存在と時間の果てに(ハイデッガー)」の八本の短編からなる連作ミステリー集。
『邪馬台国はどこですか?』、『新・世界の七不思議』のシリーズや、『九つの殺人メルヘン』、『浦島太郎の真相/恐ろしい八つの昔話』のシリーズに連なる系譜の作品、というところだろう。
両シリーズは、バーという限定された空間だけでお話が進むけれど、こちらは色々な場所が出てくるものの、メインとなるのは競馬場(といっても中山競馬場だったり、東京競馬場だったり、京都競馬場だったり・・・とちょこちょこ変わる)という、やはり限定空間でのディスカッション。
そして登場人物たちが議論していると、そこに時には常識ハズレとも見えるような独自の見解を持った論客が闖入し、さんざかき回した挙句に一気に収束へと持って行くというパターンも共通だ。
本筋からは離れた競馬に関する薀蓄が、これでもか、と詰め込まれてるのもお約束で、ファンならば大いに楽しめるだろう。
ただ、物語と哲学と短歌、の組み合わせは、どーにもこーにもこじ付け臭い。
読みやすいのは良いのだけれども、オチにはどうにも納得出来ず、「ムリヤリ感」がそこかしこに漂ってしまってる。
この人のこの手のパターン物は好きなんだけど、帯にある「哲学と短歌の無茶な核融合」という文句は、正にその通り!
・・・と思えちゃうのが玉に瑕。
鯨統一郎の作品というのは、正直当たりはずれが激しいです。そのため、一度離れてしまうと読もうかなと思わなくなったりするのですが、面白いものにあたると、面白いので全く読まなくなるという事はないというか。個人的には、「邪馬台国はどこですか?」「新・世界の七不...... more