『信長の棺』 加藤廣
2008年 11月 01日
題名もちょっと意味深ですね。
明智光秀の謀反により、本能寺で憤死した織田信長。
しかし寺の焼け跡からは、明智側の懸命の捜索にも拘らず、森蘭丸ら近習を含め肝心の信長の遺体は発見されず仕舞いであった。
果たして信長の遺体はどこへ消えたのか?
その謎に太田牛一が挑む、というミステリー仕立ての歴史小説です。
太田牛一と言われても、せいぜい『信長公記』を書いた人、ぐらいの知識しか持ち合わせておらず、しかもこの『信長公記』、歴史書としてはあまり信憑性が高くない、なんてことをかなり昔に吹き込まれたせいもあってあまり良い印象を持っていなかった人物なのですが、こうして取り上げられたのを読んでいくと、なかなかどうして面白いポジションにいた人物だったのだなぁと認識を改めました。
架空の人物を創造するのではなく、実在の人物とは言いながらも世間一般にはあまり知られていない人物を探偵役に、そして誰もが知っていて興味を惹かれるであろう題材を掘り下げる、という構成も上手いなぁと思いました。
物語の最後では、消えた信長の遺体について作者なりの解答が示されますし、合せて光秀が謀反を起こした理由や、その光秀を討った羽柴秀吉の驚異的な巻き返しの謎、そしてその裏にある秀吉の出自等々、従来にない斬新な解釈も施されています。
周到な準備の上で用意された謎解きであろうことは想像に難くなく、素人目には充分な説得力が感じられましたが如何なものでしょうか。
なお作者はこの後、『秀吉の枷』、『明智左馬助の恋』を書き下ろし、今では<本能寺三部作>と総称されています。
機会があれば、是非こちらも続けて読んでみようと思っています。
天正10年(1582年)6月2日、明智光秀の謀反により、織田信長は炎上する本能寺に姿を消した。 側近の太田信定は、信長からの預かり物を背負い、二人の従者を連れて密かに安土を抜け出した。めざすは柴田勝家のぎ..... more
太田牛一の信長崇拝っぷりにちょっと引く。 地の文まで「信長さま」表記という徹底ぶりです。 信長フィルターがかかってるためとはいえ、 「『信長公記』に、この逸話は載せないでおこう…後世での信長様の評価が下がるから!」 とか言って、 信長のマイナスイメージになる…... more
ドラマはどうしても軽かったんですが、原作なら読んでみたいかも。
TVドラマ版は丁度2年前に放送してました。
「原作読んでから」とその時は観なかったのですが、これでようやっと観ることが出来ます。
主演が松本幸四郎という段階で、自分のイメージとはちょっと違っちゃってるのですが・・・(苦笑)。
TBありがとうございました!
文庫になって、もうそんなに経つんですね…。
個人的に「5つの箱の中身」はちょっと期待はずれだったのですが、
信長の遺体の在り処や秀吉の出自の秘密など、
他の作品にはない解釈がなかなか面白かったですね。
続編2つは、『信長~』よりイマイチ注目度は低いものの、
面白さはどうなのでしょうか?
『秀吉~』のボリュームにちょっとビビってまだ手を出せずにいます…。
まだ『明智左馬助の恋』は読んでいないのですが、『秀吉の枷』はなかなか面白いと思いました。
この人の場合、ストーリー自体の面白さもさることながら、無名ではないものの、一般的にはあまり有名でない人物を中心に据えるという、そのキャラクター設定、構成が第一に面白いんじゃないかなあと思います。
『信長の棺』を気に入られたならば、『秀吉の枷』は是非。ハッキリ言って続編です。
読了しまして、やっぱり次作が気になっております。
そうですね、物語の展開の面白さよりも、設定&構成がうまい作家さんですよね。
>ハッキリ言って続編です。
力強く後押しして頂いたので、
覚悟を決めてこれから取り掛かろうと思います。
そういえば、外伝の『安土城の幽霊』も発売になりましたね。