『天空の城ラピュタ』(1986)
2008年 11月 09日
これがスタジオジブリの第一回作品。
監督・宮崎駿としては『ルパン三世/カリオストロの城』、『風の谷のナウシカ』に続く3本目。
そしてこの作品を宮崎アニメの最高傑作に推す声も多い。
何を書くそう自分もその一人である。
『未来少年コナン』や『カリオストロの城』から入った人には宮崎作品の集大成の趣きだろうし、やや遅れて『ナウシカ』あたりから接した自分にとっても一番すんなりくる世界である。
コナンほど超人的ではないが大人顔負けの活躍を見せる少年パズーと、同じように王家の血筋に生まれながらクラリスよりか地に足のついた感が強い少女シータ、それにラピュタの財宝を狙う悪人たち(単純にお宝目当ての軍隊と、それを利用しつつ密かな陰謀を企むムスカ)と、結局は主人公たちを助けることになる憎めない海賊ドーラ一家が絡んでくるという冒険物語で、久石譲の音楽も前作より画面とのシンクロ度が高くなって映画としての完成度も高めている。
<飛翔>――空を飛ぶことが宮崎作品の一つの特徴でもあるが、物語の展開に即した形で「飛ぶ」ことの魅力、そして怖さを味合わせてくれるのはこの作品が唯一だろう。
『ナウシカ』に次ぐSF性(未来性)を期待していた人にはやや物足りないのかも知れないが、19世紀末と思しき舞台は、夢がまだ夢であり冒険が冒険として確立し得た幸福な時代。
まだ世界規模の戦争もなくロマンを追い掛けていられた時代で、スウィフトの『ガリバー旅行記』からの引用も辛うじてリアリティを保てるギリギリの時だろう(宇宙にも人類が進出している現代社会においては、この設定で物語を描くのはかなり厳しい)。
胸踊る「冒険活劇」かつ「漫画映画」という目標を満たすには充分魅力的な舞台装置だった。
またこの頃までの宮崎作品は、まだ観客に向き合っている部分が強く感じられた。
見ている人を楽しませてやろう、という心意気とでも呼べる何か、そして余裕が。
だがこれ以降は作者の趣味が剥き出しになる傾向が強くなり、またそれが世間一般に広く受け入れられるようになったことから、本来の趣向だったはずの「漫画映画」としての楽しさが薄れてきてしまっている。
声優として、タレントや著名人の登用が目立ってきたのもマイナス。
この『ラピュタ』でも初井言榮や寺田農といったアニメーションでは馴染みの薄い名前が並んではいるもののこれはピン・ポイントの起用であり、主役の二人をはじめとした他のキャストは所謂本職の声優で固めているからこそである。
パターン化した声優の演技を嫌う気持もわからないでもないが、要はそれも個人の演技レベルの話であって一様に除外してしまうやり方はどうかと思う。
近年の作品を見るにつけ、絵と音の乖離の激しさが惜しまれてならない。
ただこの映画にも欠点が全くないわけではない。
名作モノに相応しい冒険少年的でありながら、意外に受身のパズーの行動もさることながら、一番残念なのは「天空の城」ラピュタのスケール感ではなかろうか。
その広がり、大きさが今一つ伝わってこないのと、統一感が希薄なのはいただけない。
パズーとシータが内部を巡るシーンではかなりの広さを感じさせるのだが、全景シーンやクライマックス・シーンでは案外こじんまりとした印象を与えてしまう。
神話や伝説の時代に、天空にあって地上に君臨した帝国としては些か小さすぎるのではないか。
またラスト・シーンでのパズー、シータとドーラ一家の再会と別れも忙しない。
もう何シーンか挟むかあるいは時間経過をおいたあとならば、もう少し余韻に浸れていたのにと思えてならない。
『ナウシカ』のエンド・クレジットのように。それでもなお、この作品が輝いているのは事実で、宮崎ブランドがすっかり定着している今、もっと再評価されて良い作品である。
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もっとも、それでもどの作品も大好きなことには違いありません。
文中でも絵と音のことに関して言及されてますが、ホント、純粋な映画音楽ってなくなりましたよね。たいていポップスのタイアップだったりで、昔みたいに映画音楽というジャンルでくくることができない。私の記憶では『トップガン』あたりからそうなってしまったように思います。
そういう意味でも、久石さんやジョン・ウイリアムズのような人は希有の存在だと思えます。
『崖の上のポニョ』は“よろづ屋”名義の“もったいないCINEMA”で記事を書くハメになりました。宮さんは相変わらず好きで尊敬してますが、それとこれは別。
それ以上のことはエクスカリバーさんの眼でご覧になったあとの感想を楽しみにします。
その点こちらは2時間(強、ですけど)という時間を有効に活用してるなぁと思います。その分、まとまっているように思うのですが、如何でしょう?
『長靴をはいた猫』の延長線上というのは確かですね。
ただこのテーマ、男の子なら誰もが一度は夢見るシチュエーションじゃないかなぁと思います。その点では拡大再生産も歓迎なんですけど(苦笑)。
冒険活劇としては「インディ〜」「ハムナプ」の最新作なんかよりずっと完成度は上ですよね。まあ比べられないけど・・・。イメージです。(笑)
そう言う意味では昨今の映画ってシナリオの練り不足な作品がすごく多い事にあらためて気づきますね。
逆に『バック・トゥ・ザ・フューチャー』みたいに、長い間日の目を見ずにシナリオ段階のまま作家の手元で寝たまんまで腕のいい監督が掘り出してくれるのを待ってる作品も結構あるのかも。
テレビアニメもそうですが、いずれにせよ、完結していない作品を映像作品に仕立てるのってそろそろやめて欲しいなあ。ナウシカもそうでしたものね。むしろよくまとめたなあ、って思いましたものね。
『長猫』ボケた画像のLDしかありませんが、何度も何度も観てます。
しかし考えてみればピエールも“流されキャラ”でしたねえ。宮さんの男キャラの中ではコナンとアシタカだけが鉄の意志(使命感)の持ち主かな?
そうですね!『ラピュタ』のパズーやシータ、ドーラ一家の「その後」見てみたいです!パート2でなくてもいいので「あれから4年…」といった感じででも…。言われて俄然興味を持ちました♪
> 作者の趣味が剥き出しになる傾向が強くなり、
何か感じる違和感。そう、それかも知れません!NHKで『ポニョ』の制作時の番組を観たのですが、宮崎さんとその母親との関係を作品に入れ込んでいる(?)のような件を見て映画館に行くつもりだったのを止めてしまいました。
この作品もリアルタイムで知ってるのはもう20代後半以降の人でしょうかねぇ。
うーん、やっぱり自分も歳食ったなぁと感じます。。。
あ、「インディ」や「ハムナプトラ」とは比較したこともなかったです(苦笑)。
確かにこの作品も神話や伝説、伝承、失われた古代文明を求めるお話でしたね。
古さを感じさせないという点では、この作品が一番なのかも。
『長猫』は先日DVDを購入してしまいました(中古ですけど)。ついでに続編(?)2本も。
でも個人的にはこの作品、”ミヤザキブランド”ではなく、あくまでも東映動画作品、矢吹公郎作品という意識が強いですね。
例えどれだけ中心的な役割を果たしていたとしても。
『ラピュタ』も、当初の依頼は『ナウシカ2』だったみたいですし、今でも続編を、という声はあるみたいです。
まぁ今となっては殆どスポンサー・サイドからじゃないかと思いますけど(苦笑)。
で、以前にも書いたんですけど、『ナウシカ2』には興味ないですが、原作が完結しているので、今度は原作に沿ったリメイクという形ならばアリかなぁ、と。
『ラピュタ』の直接的な続編じゃなく、例えばこれよりも後の時代を舞台にした作品にパズーやシータが出てきたり、ドーラ一家の名前が出てきたり、というのも良いかなぁ、なんて思ったりして。
『ポニョ』・・・まだ上映してるんですよね。どーしよーかなぁー?