『アップフェルラント物語』(1992)
2008年 11月 10日
スリで生計を立てている孤児の少年ヴェルは、偶然に悪党に監禁されていた少女フリーダと出会った。
彼女は亡き祖父から鉱山の権利を譲り受けていたが、その鉱山には恐るべき兵器になりうる何物かが眠っていた。それを狙ってポーランド人女性や彼女と組んだアメリカ人、それにアップフェルラントを併合しようとするドイツ軍らに追われているのだ。
フリーダを助け出したことから、ヴィルは国際的な陰謀に巻き込まれることになる。

原作は田中芳樹の小説で、それを ふくやまけいこ が漫画化し、更にアニメーション映画化したのがこの作品で、予備知識なしで観た時は随分と『ラピュタ』に似てるなぁと思ったものだった。
『ラピュタ』は19世紀末でこちらは20世紀初頭のお話だし、夢やロマンを追っている『ラピュタ』に対して、こちらはやや現実に即した国際紛争が題材。実際は少年少女の冒険物という以外これといって共通点はないのだけれども、何となく同じ匂いを感じてしまうのは不思議なもの。もっとも後で原作小説を読んだ際に、執筆動機が『ラピュタ』にインスパイアされたからだと知った時は大いに納得したものである。
ただ、原作小説はなかなか面白かったものの、アニメ映画としての出来は今ひとつ(ついでながら、コミック版もスケール感に乏しい)。
劇場公開されたとはいえ、元々はOVAの企画だから仕方ないという言い方も出来るかも知れないが、スタッフを揃え、時間やお金をもっと掛ければ『ラピュタ』を凌ぐとは言わないものの、それに匹敵するほどの傑作になりえていたかも知れないなぁと思うと残念ではある。
いっそのこと、スタジオジブリでリメイクしてみたらどんな作品になることやら。
ところでこの作品の中で、ヴィルが「ホクスポクス・フィジブス!(災いよ去れ)」という呪文を唱えるシーンがあるのだが、これは『銀河英雄伝説』にも出てくる文句。ドイツの一般的なおまじないだということだが、ちょっとしたリンクというか、お遊び?