『アンドロメダ病原体』 マイクル・クライトン
2008年 11月 14日
○○理論とか、数式が並んでいたり、専門用語が散りばめられていたり・・・ということで最初のうちは「こりゃお手上げかな」と思っていたのですが、途中からはグイグイと引きずり込まれ、上下二冊本ですが一気に読み終えた記憶があります。
映画公開に合せて旧作が書店店頭に並ぶようになり、またハードカバーで出ていたものが文庫化されたりというタイミングもあって、この時期にクライトン作品を一気に読みましたが、その中で「クライトン作品の原点」と再三強調されていたのがこの作品。
しかし「古い作品だからどうなのかなぁ」なんて思いながら読み始めたのですが、いやこれはなかなか。映画版の方はハッキリ言って古さを感じますが、小説の方は色褪せていませんでした。
以下、「栞をはさんで・・・」より引用、転載――

アリゾナ州ピートモンド。人工48人のこの小さな町は突如死の町と化した。墜落した人工衛星に付着していた未知の物体が、住人たちを瞬く間に死に追いやったのだ。衛星を回収に向かった軍の回収班も連絡を断ち、遂に極秘に組織されていた特別プロジェクトのメンバーに召集がかかる。調査の結果死体の血は全て凝固していることが判明したが、奇跡的にアル中の老人と赤ん坊という、対極的な生存者も発見された。彼らは何故に助かったのか、2人の共通点は一体何なのか?
原書は1969年に出版された。まだアポロ宇宙船が月に到達する前である。今更ながら著者クライトンの先見の明に驚かされる。しかも既に起こってしまった事件の報告書に基づいてまとめられた、というドキュメンタリー・タッチで、図表やデータ(本物と、そして巧妙に作られた創作物)を折り込んでディティール・アップを図るテクニックもクライトンならでは。反面、登場人物たちに魅力が乏しいが(誰が誰やら、あまり差別化されていない印象がある)、それもまたクライトンの手かなとも思えてくるくらいだ。
物語は、はたして宇宙からやってきた未知の生命体とは如何なるものなのか、何故赤ん坊と老人だけが助かったのかという謎解きの興味でグイグイと引っ張って行くのだが、そのクライマックスは些か唐突。
”予め用意されていた”核爆弾の爆発阻止へのタイム・サスペンスは結末が読めるだけに興醒めだし、せっかく生命体の正体が判明し対策が取られるのかと思いきや、突然変異によって人類にとって無害な存在となり、メデタシメデタシという解決は狐につままれたよう。
とはいえ未知の細菌が人類にとって大いなる脅威となる、というのは今日でも全く色褪せない内容。細かい部分に欠点があるにせよ、なお一級のエンターティンメントであることには間違いない。
1971年にロバート・ワイズ監督によって映画化(邦題『アンドロメダ・・・』)されている。
しかし、何故この生命体が「アンドロメダ菌株(ストレイン)」と名付けられたのかが、最後までわからなかった・・・。

無人衛星が着地したアリゾナ州の田舎町ピーモンドは、その夜、一瞬にして死の町と化した。衛星に付着していた地球外病原体=アンドロメダ病原体が原因とみられる。だが、そこには2人の生存者がいた。 すぐさま`..... more
コメント、有難うございました。
自分にとってのクライトンは、やはり『ジュラシック・パーク』以降ですね。
それ以前は「名前は聞いたことがあるけれど・・・」程度の認識でした。
まだまだ活躍して欲しかったですね。残念です。