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『千里眼』 松岡圭祐

茨城県の山中にあるとある寺が全焼、大規模な山火事となった。しかしこれは恐るべき事件の前触れだった。
続けて米軍の横須賀基地に何者かが侵入し、ミサイルの発射装置が起動する。これらは全て”恒星天球教”という新興宗教の信者たちの仕業で、彼らはテロリストの側面も持っていたのだ。
発射を阻止するにはパスワードを解読し、命令を無効にするしかない。だが、米軍にも自衛隊を含めた日本政府にもなす術もないまま、刻々とカウントダウンは続けられていく。
そんな時、実行犯が以前東京晴海医科大付属病院でカウンセリングを受けていたことから、藁にもすがる思いで協力を要請したのが、院長であり<千里眼>と異名をとる友里佐知子と、その彼女の片腕としてカウンセラーを勤めている岬美由紀だった・・・!

『千里眼』 松岡圭祐_e0033570_8253784.jpg元航空自衛隊のパイロットという経歴を持つ、異色のカウンセラー岬美由紀をヒロインとした「千里眼」シリーズの一作目。
『催眠』の続編として書かれているが、厳密に言うと小説の『催眠』ではなく、映画版の『催眠』の続きであり、尚且つ当初より映画化を前提にして書かれたという、変わった経緯を持った作品。
ただ映画版の『千里眼』は製作会社が違うこともあり(『催眠』は東宝、『千里眼』は東映)、『催眠』の続編という部分はボカされている。

一時は貪るように読んでいた「千里眼」シリーズだけれども、最近はすっかりご無沙汰。しかし新作は相変わらず続々と出ているので、気になって引っ張り出してきた。
この『千里眼』も『催眠』同様に幾つかのヴァージョン違いがあり、今回読んだのはやはり小学館文庫版。
ハードカバーで出ていたものと基本的には同じらしいが、岬美由紀の設定が変更され、誕生日や血液型などが映画で岬美由紀を演じた水野美紀と同じになっている。今出ている角川文庫版では、どうなっているのだろうか。

『催眠』が嵯峨敏也と入江由香の物語でありながら、サブプロットとして、もう一人のカウンセラー朝比奈宏美と一輪車に乗れない竹下みきという少女とのやりとりや、嵯峨や朝比奈の上司である倉石とその別れた妻で脳外科医である知可子とのエピソードを盛り込んだため、やや散漫とした印象を与えるのに対し、この作品では、一見無関係に見える美由紀と登校拒否児童である宮本えりとのエピソードも、きちんと伏線として機能しているなど読みやすさが増している。このあたりは作者の成長だろう。またこのシリーズ、追いかけてみようかな。
Tracked from タジタジ☆マハル at 2008-11-16 13:38
タイトル : 「千里眼」松岡圭祐
可憐で心優しい最強のカウンセラー、岬美由紀登場!横須賀基地から最新鋭のミサイルが突如、都心に向けて発射された。着弾を阻止するには十桁のパスワードを解読しなければならない。美由紀は解読にとりかかる…。一方、千葉の南房総では巨大な観音像に魅せられる不審な少...... more
Tracked from おたむ’ず at 2008-12-11 00:29
タイトル : 千里眼
『千里眼』by松岡圭祐   可憐で心優しい最強のカウンセラー、岬美由紀登場! 横須賀基地から最新鋭のミサイルが突如、都心に向けて発射された。着弾を阻止するには十桁のパスワードを解読しなければならぎ..... more
by odin2099 | 2008-11-15 08:27 | | Trackback(2) | Comments(0)

「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”


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