『夢見る黄金地球儀』 海堂尊
2008年 12月 12日
桜宮水族館には、バブルの頃にバラ撒かれた”ふるさと創生基金”の一億円で作られた黄金の地球儀が鎮座ましましている。これをソックリ頂いちゃおうというのだ。
初めは全く相手にしていなかった平介だったが、様々な経緯から手を染めざるを得なくなり、やがては率先して計画を進めるに至るのだが、いざ決行という段になり、予期せぬアクシデントが次々と起こってしまう、というお話。

概ね現在を舞台にしている”田口・白鳥コンビ”のシリーズや、過去に遡って1988年頃の、その登場人物たちの若き日を描いた作品群とは違い、この作品は2013年という近未来なのが目新しい点だし、最早医療サスペンスでもメディカル・エンタテインメントでもない、コミカルな犯罪小説になっているのが大きな特徴。キャラクターの造型も違うし、これまでの作品とはかなり雰囲気が違うので、続けて読んできた人は面食らうんじゃないかな。
ただこれも、作者の新しい側面だ、と歓迎する人ならば楽しめるとは思うけど、それでも従来の作品に比べると若干「落ちる」印象なのは否めない。まぁ、書き手にとって不得手なジャンルなのか、或いは読み手側に戸惑いがあるのかはわからないけど。
で、これまでの作品群を読んできた人なら、『螺鈿迷宮』や『ジェネラル・ルージュの凱旋』で起こった”事件”への言及があるのが嬉しいが、驚きなのは『ナイチン・ゲールの沈黙』に出てきた、というよりも実質的な主人公だったキャラクターが再登場してくることだろうか。
これに関しては意外としか言いようがないし、個人的にはあまり納得出来る形でもないのだけれども、それでも旧友の消息が掴めた、という意味では喜ばしいことなのかな。
本家シリーズ(?)では『チーム・バチスタの栄光』に続いて『ジェネラル・ルージュの凱旋』の映画化が発表されたが、そちらはどうも期待薄。むしろこの作品のような小品の方が、映画としては面白くなりそうなんだけれども・・・?

海堂尊/著 こちらも海堂さんのバチスタシリーズで桜宮市が舞台ですが、今回は医療からは離れた物語となっていますし、ちょっとだけ未来の2013年という設定です。タイトルの黄金地球儀は、これまでの作品にも何回か出てきましたが、バブル期の「ふるさと創生基金」の1億円で桜宮市が作った黄金をはめ込んだ地球儀。 家族で鉄工所を営んでいる主人公の平沼平介の元に、悪友ガラスのジョーがやってくる。そしてジョーは平介に「1億円欲しくない?」と黄金地球儀を盗み出すことを持ちかけるのです。 医療が絡んでいない本作です...... more

{/book/}「夢みる黄金地球儀」海堂尊 1988年。未曾有のバブル景気に沸く日本では国庫から各地方公共団体に一律一億円が支給された。・・・・・そういえばそういうこともありましたねぇ?私の住んでいる市の一億円の使い道が急に知りたくなってきました。市役所に電話して聞いてみようかな〜。 あの当時一億円の使い道にはみんな頭を悩ませたでしょうね。なにか大きなものを作るには足りないし、かといって金塊にして置いておくのも芸が無いし。かなり中途半端な額ですよね、一億円って。 で、この小説ですけど、いつもの海堂...... more

夢見る黄金地球儀 (ミステリ・フロンティア 38) 海堂 尊 JUGEMテーマ:読書 1988年、バブルの時に市町村にばら撒かれた「ふるさと創生基金」首都圏の端っこに位置する桜宮市ではその1億円を50グラムの黄金をはめ込んだ地球儀にし、水族館別館にボンクラボヤと一緒に展示することになった。時は2013年、平沼鉄工所の営業担当平沼平介は8年ぶりに現れた悪友が言い放つ「久しぶり。ところでお前、1億円欲しくない?」の言葉を引きがねに、黄金地球儀略奪作戦に加わる事になった。 「ブラックペア...... more

カバーイラストレーションは佐久間真人。ブックデザインはWONDER WARKZ。 東京創元社ミステリ・フロンティア。 2013年の桜宮市。語り手の平沼平介は八年ぶりに大学時代の悪友、 久光譲治ことガラスのジョーぎ..... more

夢見る黄金地球儀 海堂 尊 東京創元社 1575円 Amazonで購入 書評 /ミステリ・サスペンス 首都圏の端っこに位置する桜宮市に突如舞い込んだ1億円。その名も「ふるさと創生基金」。だがその金は黄金をはめ込んだ地球儀に姿を変え、今では寂れた水族館... more

JUGEMテーマ:読書 首都圏の端っこに位置する桜宮市に突如舞い込んだ1億円。その名も「ふるさと創生基金」。だがその金は黄金をはめ込んだ地球儀に姿を変え、今では寂れた水族館にひっそり置かれているだけとなった――はずだった。が、ある日を境にトラブル招聘体質の男・平沼平介の日常を一変させる厄介の種へと変貌する。 8年ぶりに現れた悪友が言い放つ。「久しぶり。ところでお前、1億円欲しくない?」 かくして黄金地球儀奪取作戦が始動する。二転三転四転する計画、知らぬ間に迫りくる危機。平介は相次ぐ難局を乗り...... more



絶不調。 たぶん、このブログを開設してから初めて!ってくらいの絶不調。あ、読書に関しては、です。もちろん。個人的に「フィギュアスケート世界選手権”祭”」大絶賛開催中!だったからってのもあるんだろうとは思いますけどね。なんせこの1週間は、珍しく本よりもTV&PCに齧りつきだったもんで。昔からのフィギュアファンとしては、近年のブームのお陰でTV放映時間が増えまくって嬉しい限りです♪ちなみに、真央ちゃん&高橋&ランビエール大応援団(団員1名/笑)を結成しておりました。ちょっとジュベールにもクラ...... more

海堂尊著「夢見る黄金地球儀」を読了しました。海堂さんの小説は、人物や舞台、小道具などなど、これまで読んだ全ての作品で、クロスオーバーしている部分がありましたが、今作もそれは同じで、「ナイチンゲール〜」に登場していた浜田小夜さんと牧村瑞人くんが登場していたり、舞台もこれまで同様、桜宮市です。 また細かなところでは、桜宮三姉妹というビンテージ・ワインなんかも登場し、どこかの作品に出ていたよな〜と、海堂さんの作品を読んでいる人なら、思わずニヤリとしてしまう所も健在です。 ただ、時間的には、未来の話になる...... more

夢見る黄金地球儀 (創元推理文庫)/海堂 尊 本の内容 1988年、桜宮市に舞い込んだ「ふるさと創生一億円」は、迷走の末『黄金地球儀』となった。四半世紀の後、投げやりに水族館に転がされたその地球儀を強奪せんとする不届き者が現れわる。物理学者の夢をあきらめ家業の町... more

ただいま『医学のたまご』をぼちぼちと・・・と読み始めました。
今までの作品に比べるとイマイチかな~と思ってしまったのですが、『ナイチンゲール~』のあの方たちが登場してきたところがうれしかったですね。

トラックバックさせていただいたのでご挨拶です。
私も医療モノじゃないと知って肩透かし気分を味わった口ですが、でもあの人たちの消息が知れてちょっとうれしかったのでスピンオフとして楽しむ事にしました~。
初めまして。わざわざ有難うございます!
この作品、それとその前の作品と、自分としてはちょっと納得の行かない作品が続いてきちゃいましたけれど、それでもこの一連の作品群、好きですね。
今春にはまた次の作品が出るようなので、そちらも楽しみです。