『途中下車』 高橋文樹
2008年 12月 22日
主人公は大学生の「ぼく」、そしてヒロインは四つ違いの妹「理名」。
「ぼく」の方は友人たちと遊んだり恋人が出来たりと、それなりに両親不在の心の隙間を埋めようとするのだが、「理名」は人付き合いが苦手で、結局は兄である「ぼく」に依存してしまう。そして遂に二人は・・・・。
一線を越えたという直接的な描写はないものの、純粋にプラトニックな関係とも思えない危うさが窺えるが、あくまで”家族愛”の変形というか延長というスタンスなので、近親相姦というイメージから想像されるようなドロドロしたものとは無縁。
確かに周囲からは祝福されないだろうし、二人は社会の片隅でひっそりと生きていくことを選択して終るのだが、多少の障壁はあるものの、破局を迎えるに足るだけの決定打もない展開はハッピーエンドと呼んでも差し支えないだろう。
実は血の繋がりがないというパターンではなく、「ぼく」と「理名」は本当の兄妹。タブーを肯定することに疑問を感じる人も少なくはないだろうが。
表現が硬かったり、思わせぶりというかミスリードを誘うような記述があったり、膨らませた割りに上手く活かされていない脇役たちがいたり、という具合に決して完成度の高い物語とは思えないが、ある種の爽快感や憧憬の念を感じさせてくれる一篇である。